2026年の長崎県経済はどう動くのか。1月5日夜、長崎商工会議所が主催する新年祝賀交歓会が長崎市内で開かれ、地元の企業経営者や政治家ら約580人が一堂に会した。

会場の熱気は、長崎スタジアムシティの開業や大型イベントの成功に沸いた昨年の余韻と、J1の舞台や造船業の復権という新たなチャンスへの期待感に包まれていた。トップたちが口を揃えたのは、変化を待つのではなく、自ら「仕掛ける」ことの重要性だ。

「ハード」から「ソフト」へ 試されるホスピタリティ

「昨年はポケモンGOのイベントに国内外から約42万人が参加し、長崎市の人口を超えました」 冒頭の挨拶で、長崎商工会議所の森拓二郎会頭は、昨年の「人流」の劇的な増加を振り返った。森会頭は2025年を「交流人口の飛躍的拡大の幕開け」と評価。その極めつきが、V・ファーレン長崎の悲願であるJ1昇格だ。

ジャパネットホールディングスの高田旭人社長は、運営する長崎スタジアムシティの2026年の来場者目標を「650万人」と発表。開業1年目の約485万人から+165万人と、さらなる高みを目指している。

しかし、ハード(施設)が整っただけでは成功とは言えない。運営を担うリージョナルクリエーション長崎の岩下英樹社長は、今年を「勝負の年」と位置づける。 「最高のおもてなしやホスピタリティが発揮できるかというと、まだまだレベルアップが必要です。アウェイで訪れた方々を感動させ、来年、再来年も継続的に来てもらえるか。今年はリピーター獲得の試金石になります」
岩下社長は、若手社員の成長とともに、スタジアム単体だけでなく、長崎全体での「おもてなし」の重要性を強調した。

「サッカーのように攻めろ」

J1昇格による経済効果は、観光業だけでなく地域全体の活性化に波及する可能性がある。十八親和銀行の山川剛頭取は、このチャンスを逃さないよう、地元企業に意識変革を求めた。
「ただ待っているだけではダメです。環境の変化にビジネスチャンスを見つけ出し、波に乗って成長できるか。(記者:ガツガツ行くべきですか?)そう思います。待たずに、やっぱり攻めるべきです。サッカーのようにね」

山川頭取は、30年ぶりの金利上昇局面にある中、企業が生き残るためには「経済成長以上の自社成長」が必要だと指摘。そのためには、設備投資だけでなく、賃上げや職場環境の改善といった「人への投資」が不可欠だと説いた。

追い風吹く「ものづくり」 造船と再エネの共鳴

観光と並び、長崎経済の両輪となる「ものづくり」にも、久しぶりに明るい兆しが見えている。 背景にあるのは、昨年の政権交代を経て発足した高市政権による積極的な財政支出だ。重点17分野には「造船」や「防衛」が含まれており、日銀長崎支店の伊藤真支店長は「長崎に焦点が当たっている」と分析する。

「国際的に造船の市況が戻ってきており、防衛予算の継続もある。長崎にとっては久方ぶりに造船産業へスポットライトが当たっています。また、半導体や再生可能エネルギーも新たな成長エンジンです」

洋上風力発電で「オール長崎」のサプライチェーンを

その再生可能エネルギー分野で注目されるのが、造船技術を応用できる「浮体式洋上風力発電」だ。 五島沖でのプロジェクトに携わり、神ノ島工業団地への大型投資も進める三菱長崎機工の空閑哲雄社長は、風車の大型化を見据えた戦略を語る。

「風車は直径15~20メートル級へと大型化が進んでいます。これに対応するには1社だけでなく、長崎の様々な製造業の皆さんと協力体制(サプライチェーン)を組んで作っていく必要があります」
空閑社長によれば、すでに国内外から引き合いが来ており、今年は2、3年後の売上増に向けた「準備と挑戦の年」になるという。

整った舞台(ハード)と、追い風となる政策。これらをどう活かし、実利に変えていくか。「観光」と「ものづくり」の両面で、県内企業の「実行力」と「仕掛ける姿勢」が問われる1年となりそうだ。