加害者がうらやましくて泣きました」国の会議で訴えた

2025年、近藤さんは国の「第5次犯罪被害者等基本計画」を検討する会議の専門委員に就任した。

警察庁や法務省などの官僚たちが並ぶ会議の場で、近藤さんは自身の経験をこう吐露した。

「私は20年前に被害にあったとき、加害者がうらやましくて泣きましたよ。被害者には何の支援もないのに、加害者は逮捕された瞬間から衣食住に困らない。あらゆることがうらやましくて、もう何回泣いたか分かりません」

加害者には更生のための手厚い予算と人員が割かれる一方で、被害者は置き去りにされる。

制度や支援は以前に比べ確かに充実したが、その構造は20年経っても根本的には変わっていないと近藤さんは感じている。

今も救済が遅れている領域がある。

加害者が責任能力がない心神喪失者だと、被害者は「裁判に参加する権利」すら奪われてしまう現状。そして、加害者に代わって「国が賠償金を立て替える制度」の創設だ。

2025年6月の会議で、「制度上難しい」「財源確保が困難」「住宅ローンなどを抱えている国民がどう感じるか」と述べる国に対し、近藤さんは、「その『仕方ない』を乗り越えてほしい」と訴えた。

「私は、実際に住宅ローンを抱えている周囲の人たちに聞いてみました。すると皆さん、自分や家族がいつ被害にあうか分からない。その時のために、国が立て替えてくれる制度があるなら、税金が使われても納得するとおっしゃっていました。」

「国民は、国が思うよりずっと、被害者の置かれた理不尽な状況を理解してくれていますし、優しいのです」  

          (第50回基本計画策定・推進専門委員等会議 議事録より)