細心の注意払い 子の教育に専念
幕田は獄中から母に手紙を出し、スガモプリズンでの生活は不自由ないので、心配しなくてもよいと伝えていた。2月末に拘束されて3カ月が経過し、戦犯として囚われていることは分かったものの、息子が何をしたのかもわからない。とにかく母として子を想う心情が切々と綴られている。
<幕田トメが書いた嘆願書 1947年6月7日>
幼少の時から細心の注意を払い、良き友を常に与え、子供の教育に専念したかいあって成人いたしました。幸い母の意を汲み、人情に厚き人間となりし、母のよろこびを迎える事が出来たのは、世の母として変わりありませんでした。これも一重に神の御加護によるものと神に感謝いたしています。
終戦にて帰郷したのも束の間、巣鴨入所を知った時の母の気持ちは、失心同様でただただ神に子供の無事を祈るほかは、ほどこす術もありませんでした。顛末を知らざる母のなげき、今はただただ神を信じ、神に念じて無事の帰りを待つほかなく、朝な夕なに、神に祈念しているのみです。















