伝える責任「下唐川団地通信」

能登半島地震から半年、加代さんが始めた活動があります。震災から復興に向けて変わりゆく故郷の様子を地区に残る住民、離れた住民にも伝える「下唐川団地通信」の発行です。

「復興していく過程を記録にとどめていくのも、自分の中では大事な仕事かなと思ったので、いろんな村の様子とか新しい情報とか、この村がどのように復興していくのかを記録に残すために書いているようなものです」と加代さんは言います。彼は地域再生への思いを込め、一軒一軒に通信を配ります。

若者との新たな繋がり
下唐川地区に関心を示した学生がいます。金沢大学建築計画研究室の伊藤夢乃さんです。「住民の方々と話していく中で、村全体の復興の仕方とか、それの選択肢の一つになるようなものを提案できたらいいな」と思って活動していました。

伊藤さんは何度も地区に足を運び、人口減少の加速や公費解体による更地の増加など下唐川地区が抱える課題について住民から聞き取りました。また住民たちと一緒に旅行に行くなど、研究や調査を超えて地区の人たちとの絆も深めてきました。

「15年後、または20年後にはこの村はなくなるんですよ。私たちは村じまいをしなければならなかった。おそらく。そして、あんな小さな村に大学の先生や大学生が来るなんてことを僕たちは想像もしていなかった。だから膝を交えて話す機会を実は地震が作ってくれたのかな」と加代さんは振り返ります。