吉凶のないおみくじも。多様化する現代のおみくじ
――最近のおみくじのトレンドはありますか?
平野:吉凶をつけないおみくじが増えているのも一つの傾向ですね。結果に一喜一憂するのではなく、書かれている言葉そのものを味わってほしい、という思いが感じられます。
――例えばどんなおみくじが?
平野:明治神宮のおみくじ「大御心」は明治天皇の御製と昭憲皇太后の御歌によるおみくじで、人生の教訓が示されています。東京・高円寺の気象神社には、運勢を「晴れ」や「雪」といった天気で表現する「照照みくじ」があります。また、私が関わっている東京・板橋区ときわ台の「天祖神社歌占」や埼玉県の武蔵野坐令和神社の「千年和歌みくじ」も吉凶がありません。「天祖神社歌占」は弓の弦に結ばれた短冊から1枚を引いて神さまと御縁結びできる、お守りになる和歌みくじです。「千年和歌みくじ」は、『万葉集』から現代短歌まで、1000年以上の歴史の中から選ばれた和歌を、イラストレーターの睦月ムンクさんによる美しいイラストとともに味わえます。どちらも成蹊大学の学生・大学院生とともに制作に協力したおみくじです。
――おみくじも進化しているんですね。
平野:はい。他にも、動物の置き物に入ったものや、方言で書かれたご当地みくじなど、エンターテインメント性が高く、おみくじの世界も多様化が進んでいます。古典に親しむきっかけにもなりますし、とても良いことだと思います。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
平野:おみくじは、単なる運試しではなく、神様や仏様との対話です。引く前には自分の願いや悩みを一つに絞って心を集中させ、引いた後は吉凶だけでなく、そこに書かれた和歌や漢詩、解説の言葉をじっくりと読み解いてみてください。きっと、今のあなたに響くメッセージが見つかるはずです。おみくじを人生の道しるべとして活用し、より良い日々を送るきっかけにしていただけたら嬉しいです。
――本日は、大変興味深いお話をありがとうございました。
成蹊大学 平野多恵教授
<主な著書>
『おみくじの歴史―神仏のお告げはなぜ詩歌なのか』吉川弘文館
『おみくじの歌』笠間書院
『くずし字がわかる あべのせいめい歌占』柏書房
<監修に関わった主なおみくじ>
ときわ台天祖神社(東京・板橋区)「天祖神社歌占」
武蔵野坐令和神社(埼玉県所沢市)「千年和歌みくじ」

















