「仕事でのヘルパー利用」に制度の壁
なぜ、導入がすすまないのか。国などが市町村や事業所に行った調査によると、予算的に難しいという回答があったほか、この事業自体を知らない福祉担当者も多かったという。そしてこの事業には、公務員は対象外といった制限もある。
一方で、障がい者の社会参加が進んでいるフランスやドイツなどは、そもそも前提として、生活か仕事かといった区別はなく、ヘルパー利用に助成を行っている。
障がい者福祉の専門家は、日常生活でのヘルパー利用だけに助成をする日本のいまの制度は、社会としても損失が大きいと指摘する。

京都大学 村田淳 准教授
「家で1人で過ごすとか、その間も当然、公的なヘルパーのサービスというのが必要になるわけですよね。その人(重度障がい者)たちが働きに出ることによって、社会で活動する一人の市民として貢献することができるでしょうし、その人たち自身が納税をすることも当然起きるので、そういった意味でも多様な形で社会進出を支えていくというのは、社会全般として考える必要性がある」
滋賀県大津市。県の教育委員会で、有期雇用の事務職員として働く深田澪音さん。働き始めて8か月、いまは主にデータの入力作業などをしている。

澪音さん
「仕事を依頼されて、ちゃんと正確にやって『ありがとう』って言われたりとか『完璧やったよ』って言われたりすると、やっぱり嬉しいなって思って。」
しかし、働く環境が整っているとは言えない。この日は、母の由季代さんが職場にやって来た。
母・由季代さん
「(昼食は)食べた?ちゃんと」
澪音さん
「食べたよ」
澪音さんは、朝や昼の食事を、あまり摂らないようにしている。トイレになるべく行かなくて済むようにするためだ。

由季代さんが仕事の合間を縫って介助に来てくれる時もあるが、毎日は難しい。
母・由季代さん
「今は何とか、これでやってきていますけど」
「私も来られる時間に限りがあるので」
澪音さんの職場は由季代さんが介助するための部屋を用意し、オフィスの出入り口をスライド式にした。
ただ、大津市は就労支援特別事業は導入しておらず、そもそも公務員は事業の対象外だ。経験や知識が無い同僚たちが介助することも難しい。国の制度が変わらなければ、ヘルパーは利用できず、今のまま働くしかない。
澪音さんは、なるべく何でも自分でやるようにしているが、介助があれば、もっと可能性が広がると感じている。

澪音さん
「仕事のことに関しては職場の方に頼みつつ、プライベート(トイレなどの介助)については、気軽に頼めるヘルパーさんなり、助けてくれる人がいる環境になればいいなと」
「障がいがある方が殻に閉じこもらないでいいような社会になればいいですね」














