職場にヘルパー生み出す生きがい

重度障がい者が働く上で高い壁となっている「職場でヘルパーを利用しにくい」制度。

いま、一部の自治体では、それが変わろうとしている。

島根県松江市の藤村光さん(24)。

おととしから、デザイン制作会社「トレンド」で正社員として働いていて、3Dプリンターで作るフィギュアの制作に携わっている。

藤村光さん
「お客様から入稿された3Dデータのデータチェックをしています」
「CTスキャンみたいな感じで、中が詰まっているかっていうのを確認しています」

藤村さんは幼い頃、全身の筋力が低下する脊髄性筋萎縮症を患い、重度障がい者となった。

それでも、大学時代にグラフィックデザインなどを学び、自らこの会社にインターンを申し込むなどして、就職することができた。

藤村さんは、食事や移動、痰の吸引で介助が必要だが、手元にあるボタンを押すと職場に待機しているヘルパーが来てくれる。

藤村さん
「水分をお願いします」

ヘルパーが交代しながら、ずっと見守っている。

藤村さんが職場でヘルパーを利用できているのは、国が2020年に始めた「就労支援特別事業」を活用しているからだ。

この事業は各市町村の判断で導入でき、申請が認められると、国や自治体などがヘルパー代の多くを負担してくれる。

松江市はおととし、藤村さんらの要望を受けてこの事業を導入。

長時間デスクに座ることが難しい藤村さんは、時折、ヘルパーの手を借りて体勢を変える。こうした介助があることで、他の社員と同じように働けている。

藤村さん
「とりあえず3Dプリンターの受託サービスを行っている企業を75社ほどリストアップしました」

トレンド 代表取締役 徳田裕成さん
「オッケー、リストアップしてくれたので、次週は何らかの動きにつなげていくようにしましょう」

今では会社のSNS運用も任され、70人ほどだったフォロワーをおよそ2800人にまで増やした。仕事の受注にも繋がっているという。

トレンド 専務取締役 徳田翔太さん
「SNSとかの投稿もそうですし、短期で結果がすぐ出ないようなことに関して、光さんは愚直にやって下さっている」

藤村さん
「恐縮です」

藤村さん
「目に見える形で社会貢献ができているというのは、自分の中ですごく(生きる)モチベーションになっていますし、もし働けていなかったら、社会とのつながりをどういうふうに作っていたんだろうと思うと、結構怖いですね」

しかし、藤村さんのようにヘルパーの介助を受けながら働ける人はごくわずかだ。

実は、この「就労支援特別事業」を導入している自治体は、全体の6%にも満たない。