任期満了に伴う沖永良部島・知名町の町長選挙は、現職と新人の一騎打ちとなっています。8年ぶりの選挙戦。争点や住民の声などを取材しました。

知名町長選挙に立候補しているのは、新人で農業の竹林植元さん(75)と、現職で3期目を目指す今井力夫さん(68)の2人で、いずれも無所属です。

(竹林植元 候補 無・新)「情報開示が今の役場においてはまだまだ不十分。みなさんに知らしめることによって町民自ら行政に対して積極的に参加していく、そういう雰囲気を作っていきたい」

知名町出身の竹林さんは、大阪の機械設計会社などで働いていましたが、およそ10年前にUターン。島でパパイヤやアセロラを育てています。農家への補助金などを手厚くしたいと訴えます。

(今井力夫 候補 無・現(2))「やり残した部分がまだ多々ある。この辺をしっかりして、子や孫が誇れる持続可能な町、自分たちで稼ぐこともできて、他からああいう所に住みたいなと思わせるような、そんな町をみなさんと一緒に作っていきたい」

知名町出身で元教員の今井さんは、知名中学校の校長も務めました。2017年の町長選で初当選し、現在2期目です。町の基幹産業である農業の体制づくりを強化したいと訴えます。

8年ぶりとなる知名町長選挙。争点の一つが、太陽光発電などの脱炭素化事業です。

人口5254人が暮らす知名町。去年完成した町役場新庁舎の総事業費はおよそ26億9000万円で、そのうち、4100万円あまりが太陽光発電パネルの設置や蓄電設備の整備でした。庁舎内の電力の4割をまかなっています。

竹林さんは、「町が進める脱炭素化事業は町民のためになっていない」と主張します。

(竹林植元 候補 無・新)「町民が豊かになるのであればいいが、全然豊かになっていない。その生産コストというのは全部、都会の業者、太陽光発電の業者の方に流れていって、町内には少しも利益をもたらしていない」

今井さんは「脱炭素化を先送りするのは無責任で、必要な事業だった」と強調します。

(今井力夫 候補 無・現(2))「今自分らができることは何なのかというのを考えたときに、脱炭素化というのは世界が進めていかないと、子や孫がその世代になったときに大変な地球を残してしまう。我々がその罪作りをしてはいけない」

もう一つの争点が、農業振興です。町の農業生産額はおよそ47億7000万円で、同じ沖永良部島の和泊町の76億8000万円に次いで、奄美群島で2番目です。

知名町の畜産農家、中田和久さん(46)です。およそ50頭の牛を飼育し、子牛をセリに出しています。知名町の畜産農家は現在は43戸。10年前から3割減りました。

(畜産農家・中田和久さん)「高齢化と跡継ぎがいないのが現状。跡継ぎがいないから投資もできない」

行政に望むのは、物価高対策です。

(畜産農家・中田和久さん)「資材も肥料も燃料も含めて、経費に関する対策を早めにやってもらえたら」

2人の候補者は…

(竹林植元 候補 無・新)「サトウキビの場合にはハーベスター(収穫機)の借入金、そういうもののコストが高くて、農家の人たちも苦しんでいるみたいなので、それに対する補助が必要」

(今井力夫 候補 無・現(2))「スマート農業と世間では言われているが、いかに機械化をすすめることによって、大規模農場が少ない人数でもできるような体制づくりをやっていく」

町民からは、町政への様々な声が聞かれます。

(会社員40代)「3歳の娘がいるが、子どもと遊ぶところが少ない。子育て重視でやっていける町長を選びたい」

(高校3年生18歳)「道端が結構暗いので、街灯をもっと増やして欲しい」

(自営業30代)「子どもたちにいろいろな体験をさせてあげられるような仕組みをやってほしい」

8年ぶりに選挙戦となった知名町長選挙の投票日は今月7日で、即日開票されます。