検索意図によって異なるAI要約の影響
では、このゼロクリック脅威論が、特に報道機関やニュースサイトにおいてクローズアップされるのはなぜか。
ゼロクリックの影響は、実際にはクエリーやWebページによって大きく異なる。ユーザーの検索意図は、何かの情報について「知りたい」という「Informational」だけでなく、特定のWebサイトやブランドに「行きたい」という「Navigational」、何らかの商品やサービスについて「検討したい」という「Commercial」、そして具体的な行動を想定して「買いたい・申し込みたい」という「Transactional」の4つに分類されることが一般的である。
このうち「知りたい」にあたる「Informational」は、全体のクエリーの約52%とされ、約半数にすぎない(注3) 。
そして、AI Overviewsが表示されるクエリーは全体のわずか13%程度にすぎない一方で、そのうち88%は「Informational」クエリーに出現するという調査もある (注4)。したがって、AI Overviewsの影響を受けるクエリーは全体の中ではまだ多くはないが、そのほとんどが「Informational」クエリーであり、ニュース・報道領域のWebサイトは最も影響を受けている業種のひとつといえるだろう。
このことは、ゼロクリック問題に対する「温度差」がWebサイトを運営する業種やサービス領域によって大きく異なることを示している。情報・知識の提供を主とするニュースサイト、コンテンツサイトに比べ、「Navigational」や「Commercial」クエリーが中心のブランドやメーカー、Eコマースサイトなどは、相対的にゼロクリックの影響が小さいと考えられるためだ。
信頼性の高い情報に対する希望はある
これらの背景を踏まえると、報道機関のWebサイトや、ニュースサイトにとっては、このゼロクリックは確かに深刻な問題になりかねない。さらに、「Informational」な検索意図の「入口」として利用が増加しているChatGPTやPerplexity AIなどの対話型生成AIツールがそのニーズの一部を担いつつあることも、脅威として認識されているだろう。
しかし先述の通り、実際には生成AIは量的な面で検索エンジンを置き換えているわけではなく、現時点では人々の「知りたい」という意図の一部に簡易な「アンサー」を示す道具にすぎない。
実際のユーザーの動きはもっと複雑で、生成AIの利用後に検索エンジンの利用が増加しているというデータは、ユーザーの中には単なる「アンサー」では満足できず、より「根拠」や「信頼性」を求めるような水準の「知りたい」が(多数とはいえないまでも)混在している証左だと考えるのは、希望的な観測だろうか。














