「自分は何者なのか?」台湾の根深い問い
台湾では、ことあるごとに「自分はいったい、何者なのか?」と自己への問いかけが繰り返されます。
世論調査を見ても、「自分は中国人ではない。台湾人だ」と自己認識する人は、台湾全体の6割を超えます。10月1日に最大野党・国民党の新しい主席に就任した鄭麗文氏がは私は中国人だ」と公言するくらい、中国と近しいスタンスを取る人物ですが、こうした考えを持つ人は台湾の中では少数派です。
日本の支配が終わってから80年が経過した今でも、植民地のもとで日本人として育ったお年寄りの多くは、「我々はあの戦争で、日本人として負けたのか? それとも中華民国の一員として勝ったのか?」と自問自答しています。これが戦後80年=2025年の台湾の断面でもあります。
台湾への中国の圧力が強まる一方で、アメリカのトランプ政権の対中・対台湾政策も明確ではありません。頼清徳総統の支持率も高くない中、台湾は外交的に、「ガオシー・ザオミャオ」(高市早苗総理)に期待を寄せているわけです。
高市政権の周辺外交は、本来の保守強硬派の主張が薄まり、滑り出し上々と言えますが、その成り行きを見つめる目は、ここ台湾にもあります。福岡へ戻るフライトまでの残り半日、台北の街で、この期待の熱さを改めて確かめたいと思います。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める














