企業の「行動」とメッセージを繋ぐのがクリエイティブの仕事
野村:3つ目の「整合性」というのは、具体的にどういうことでしょうか。
辻:いくら社会的に正しく見えることでも、その企業が「なぜ言うのか」という納得感がないと嘘っぽく見えたり、いわゆるウォッシュ(イメージ向上のためだけに行動が伴わないメッセージを発信している)と受け取られかねません。実際に、そうしたケースでの炎上も非常に多いです。
野村:たしかに、いいことを言っている風に見えても、その企業のこれまでの行動とセットでなければ、説得力がありませんね。
辻:おっしゃる通りです。今の情報社会では、生活者の皆さんは非常に目が肥えているので、嘘や建前は見抜かれてしまいます。そうなると「この企業はこんなメッセージを出しているけど、裏では……」といった粗探しが始まり、炎上が拡大することもあります。
ですから私たちは、クライアントがそのテーマで過去にどんな取り組みをしてきたか、社内でどんな制度を整えてきたか、といった裏付けを探します。宣伝部の方だけでなく、人事の方にヒアリングさせていただくこともあります。「なぜその企業がそのテーマに向き合うのか」という接続点を、チーム内でしっかり納得した上で広告を出すようにしています。
野村:なるほど。これまでの企業の歴史や事業そのものが、メッセージの説得力になるのですね。
辻:その接続点は、必ずしも直接的な社会貢献活動だけではありません。例えば、「『可愛い』のあり方は多様だ」というメッセージを出したいプリクラメーカーがあったとします。その企業は、目を大きく見せる機能など、時代ごとの「可愛い」に向き合い続けてきた歴史があります。それは一つの接続点です。そのように、企業の歴史や事業内容など、様々な側面から「なぜこの企業がこのメッセージを出すのか」を考える。既にあるものに光を当てるというより、その接着地点を探していくこと自体が、私たちのクリエイティブの仕事なのだと思っています。
<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。














