炎上させず、想いを届けるための具体的な3つのステップ

野村:角を丸くすればいいというわけでもないですよね。それでは誰にも届かないものになってしまう。エッジを効かせつつ炎上はさせない、という絶妙なバランスが求められると思います。炎上対策として、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

辻:私たちは、大きく3つのステップを意識しています。まず1つ目は「多様な視点を持つチームビルディング」です。例えばプライド月間のようなテーマを扱う際は、私自身もそうですが、まず当事者をチームに入れることを非常に大事にしています。当事者が不在のまま企画が進むことがないように、強く意識していますね。

野村:当事者の視点は不可欠ですね。

辻:一方で、当事者だけで作ると、知っている人同士のコンテクストだけで進んでしまい、広告の役割である「広く告げる」という点で、メッセージが伝わりにくくなることもあります。ですから、よりマス的な感覚を持つ人や、例えば女性エンパワーメントがテーマでも男性の視点を入れるなど、スキルセットだけでなく、メンバーの持つ多様なアイデンティティを考慮したチーム作りを心掛けています。

2つ目は「目的と『踏み込み度』の徹底議論」です。特に様々な議論が巻き起こりそうなテーマでは、最初にクライアントと「何のために、誰のためにこのメッセージを届けるのか」「誰を一番守らなければいけないのか」を明確にします。その上で、「どこまで踏み込めるのか」を議論します。企業には様々な立場の方がいて、本社の方針など、向き合わなければならない事情も多々あります。生活者から見れば「もっとはっきり言ってよ」と思うかもしれませんが、組織としての着地点を丁寧に見つけていくのです。

そして3つ目が最も重要だと考えているのですが「なぜその企業がそのテーマでメッセージを出すのか」という整合性です。