不安のあった小林が確実な走りができた理由は?

5区の小林は4区から20位でタスキを受け取った。予選通過ラインの16位とは31秒差、距離にすると200m弱の差があった。

「前の選手たちが(差がない)団子状態で来ていると聞いていたので、その集団を抜かしてクイーンズ駅伝出場圏内にチームを持って行くことを目標に走りました」

東京世界陸上マラソンから1か月後。練習を再開すると左足底に痛みが出て、それをかばって走っていたため、左ひざも気になり始めた。さらには左の大腿部に筋肉痛も出てしまった。河野監督は小林の回復を優先した練習を組み、区間も前回区間2位で走った3区ではなく5区に起用した。小林自身はレース前には「正直自分自身の調子はわからない」と、不安要素も自身に感じていた。

大塚製薬のアンカーの6区は棚池穂乃香(28)で、昨年は5区で区間賞を取った選手。夏の走り込みに不安があって6区に回ったが、棚池が抜かれることは考えにくい。小林の6区への中継順位でクイーンズ駅伝出場が決まる展開になっていた。

9秒先に中継所を出たクラフティア(旧社名九電工)・唐沢ゆり(29)に1.5kmまでに追いつき、2.7kmまでには唐沢とともに16位に浮上していた。4.4kmまでに唐沢に引き離されたが、6.9kmで小林が再び追いつくと、その後は徐々にリードを奪っていった。8.4kmまでに14位に浮上し、その順位で6区に中継した。

「(唐沢に離されたところは)全力で走っていましたが、体が動かなかったことに加えて、焦ってしまったところもありました。途中で河野匡監督から『焦らないでいいよ』と言ってもらって、後半が粘れる自分の走りを思い出しました。前半をもう少しよく走れたら区間賞に届いたのかな、と思うと悔しいのですが、現状の力を出し切って、クイーンズ駅伝を勝ち取る位置までチームを押し上げられたことはよかったと思います」

小林の1km毎のスプリットタイムは、最初の1kmは3分09秒3(大塚製薬提供)と速く入った。唐沢に追いつくことを優先した結果だった。2km以降は3分15秒0~3分29秒7とスプリットタイムの幅が大きかったが、コースの起伏や風の影響を考えれば、「最後まで落ちなかった」(河野監督)と、小林の特徴が発揮されていたことを認めている。

昨年の3区では最初の1kmを3分05秒で入り、その後もハイペースで前を行く選手を10人抜いた。今年の5区でも6人を抜いたし、最初の1kmは3分09秒と速かったが、昨年に比べれば遅い展開だった。

だが繰り返しになるが、世界陸上1か月後というタイミングで、プリンセス駅伝に合わせるための練習はまったくしなかった。5区は起伏と向かい風のある区間でもある。その状況でも9秒差を一気に詰め、得意の後半で順位を上げた。小林の底力がアップしていることを物語っていた。