“現代の日本の若者に迫る闇”~知っているようで目を向けないことを映画に~
――さて、Netflixの「今際の国のアリス」や「幽☆遊☆白書」などエンタメ性の強い作品を手掛けたTHE SEVENが初の劇場映画に、現代の日本の若者に迫る闇の部分を描いた作品を選んだのは意外でした。どんな狙いがあるのでしょうか?
森井 日本の中身の問題とか、若者の貧困、あまり知ってるようで実情を知らない人が多いと思うんです。日本人ってみんな、「日本って良い国」みたいな幻想があるじゃないですか。だけど実際、僕より若い世代が食べるのにも困っていたりしているという現状を、知っているようで目を向けないことを映画にしてみたいと思っていました。
我々はオリジナルIP会議というのを定期的にやっているんですけど、その中で「若者が走ってしまう闇バイトものなどをテーマにしてできないかな」なんて話をしてたところに、永田琴監督からこの企画の提案を受けた流れです。
――永田監督がこのテーマで映画にしようと思ったいきさつは?
永田 実は自分の身近で、警察のお世話になることが起きたんです。私自身今までそういうことに全く触れたこともなかったのだけど、その出来事を通して、若い子がなぜ犯罪や、犯罪まがいのことをしてしまうのか、どういう気持ちなんだろうと考える様になって。
やっぱり悪いことをしたら自分の人生に傷がつくわけじゃないですか。だけど話をしていると「就職の時にそんなこと調べられたりしないし、よっぽどのところに行かない限り表に出ることはない」と。「いやいや、どういう価値観でそんなことが言えるの?」と、驚きを超えてショックだったんですよね。
私の様に昭和の人間にとって、犯罪ってもっと遠くにあって簡単には触れることがない絶対的にダメなことだったのに、今は善と悪にわかれている中で、すごくグレーなところに存在しているみたいで。絶対に超えてはいけない一線だったはずが、今はそうではない。
「こういうことが起きても、まあこのくらいで済むらしい」とか、「大丈夫じゃね?」みたいに、若い子たちが自分で調べて簡単に判断できてしまう。“情報が手に入りやすいがゆえに、自分の中で恐ろしいことまで安易に判断できてしまう世界”が、本当に怖いなと思ったんです。
だから彼らの精神状態を知りたくて、ドキュメンタリーを見たり、ルポやノンフィクションの本を読んだりするようになりました。それがだんだん“若者の貧困”や“犯罪”、女の子でいうと“パパ活”や“虐待”に遭ってる子たちの話に広がっていったんです。
最初はただ知りたいだけだったんです。でもだんだん知識が増えるにつれて、「私もこういうテーマで何か映画を作れるかもしれない」と思うようになって。それからそのテーマと「馬の合う原作はないかな」と小説を探し始め、最終的に「愚か者の身分」(西尾潤・徳間文庫)に出会いました。














