
確かにこれまでの旧統一教会の対応を見ると、文科省側が神経をとがらせることも理解できないわけではない。例えば、外国特派員協会で「カルトの支配から逃れる」というテーマで会見した旧統一教会の元2世信者、小川さゆりさん(仮名)に対して、旧統一教会側が会見をやめるようメールを送っていたことは記憶に新しい。また妻が旧統一教会の信者である橋田達夫さんの自宅に“アポなし訪問”し、「マスコミにはもう出ないで欲しい(橋田さん談)」などと求めたともされている(旧統一教会側は否定)。

一方で、慎重なうえにも慎重な姿勢で臨んだばかりに、史上初の質問権行使という重大事にもかかわらず、適切な手続きを踏んだのかどうかや、どんな質問内容であったのかという検証までも難しくしているのは、後世に禍根を残しかねないと考えている。
■消えた宗務課 質問内容も不明なまま

質問権を行使するにあたって中心となって作業しているのは、文化庁の宗務課という部署だ。この部署が突然「消えた」のもその一例だ。宗務課があったはずのフロアマップには先月、「宗務課」の部分に紙で目張りがされた。部屋を訪ねてみると、机や椅子はそのままに無人の状態だった。
宗務課は現在、法務省、警察庁、金融庁など各省庁から出向してきた人員合わせて38人態勢となっている。表向きには「人数が増えて本来ある部屋だと人が入りきらない」とのことだが、ある関係者は「従来の宗務課の部屋は旧統一教会が2015年に名称変更をするときに直接来ているはずで、その時に場所がばれている」と話す。つまりこれも明らかに旧統一教会を警戒した対応だった。
対面で取材しようと電話で場所を聞いても、どこで作業をしているかは「答えられない」という。通常の取材活動であれば当然できる、担当者への直接取材は難しい。
また、「質問権」の内容について永岡文科大臣は「法人の組織運営に関する規定文書、収支財産に関する書類、帳簿について報告を求める」と会見で明らかにしている。ただより具体的な内容については「効果的な行使の観点から差し控える」としている。文化庁の担当者も詳細な内容は明かさなかった。
内容を明かさない理由についてある文化庁の幹部は、「少しでも質問内容が漏れることはあってはならない」「揚げ足を取られるようなことがないようにしないといけない」と質問権の行使前に話していた。しかし、旧統一教会側がすでに質問内容を把握している今、公開できない理由はどこにあるのだろうか。