何よりも怖い「日本国債売り」
実際、アベノミクスと異次元緩和の結果、日本の財政・金融政策の選択肢は、大きく制限されています。誰が総理大臣であろうと、最も警戒しなければならないことは、日本国債売り、つまり市場金利が急騰することです。借金である財政赤字を膨大に抱える日本にとって、金利の急騰は、利払い費の増大に直結します。その分、使える予算が圧迫されてしまうのです。
イギリスのトラスショックを持ち出すまでもなく、こうした市場心理の急変は、いったん起きてしまうと、沈静化に時間がかかり、厄介です。
10年物国債の利回りである日本の長期金利は、10日、一時1.7%を記録し、17年ぶりの高い水準を更新しています。インフレ定着時代には、長期金利の一定の上昇が避けられないだけに、一層の注意が必要な状況です。
市場の警告を見逃さないバランスを
8日付のイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は、高市氏に対し、「アベノミクスを継承するな」とした上で、財政支援は「最も苦境にある層と最も生産的な分野に限るべきだ」と主張しました。また、ワシントンにある有力シンクタンク、ピーターソン国際研究所所長で、知日派でもあるアダム・ポーセン氏も、「積極的な財政政策は市場の動揺を招く恐れがある」と懸念を示しています。
各国の財政赤字が拡大し、どの国でも、長めの金利が大きく上昇する中で、国際的に、債券市場動揺への警戒感が、かつてないほど高まっています。
自分の言葉で明解に語る高市新総裁の発言は、魅力的な分、市場へのインパクトも大きくなります。為替や金利など、金融市場から発せられる警告を見逃さずに、現実的に政策を進めるバランス感覚も、また持ち合わせていることを強く期待します。「日本がまた戻ってきた」と言われるためには、マーケットの「信頼」が欠かせないからです。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














