「感情というレガシーが必要」新旧のオランダ館スタッフが交流

 9月13日、小野さんはオランダ館で行われたあるイベントに招待されました。70年万博のオランダ館スタッフと現在のスタッフが一堂に会し、55年前の思い出やその後の人生経験などを聞いて交流するイベントです。

 小野さんに声をかけてきたのは、当時、本国から来ていたオランダ館スタッフの1人のリリアンさん(78)です。リリアンさんは大阪万博でベトナム戦争に向かう途中のアメリカ軍兵士と出会ったことが、その後の人生に影響を与えたと語ります。
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 (70年万博「オランダ館」スタッフ リリアンさん)「パビリオンで出会ったアメリカ陸軍大尉と文通し、ベトナムで彼を訪ねる計画を立てていましたが、甘い考えでした。忘れもしないあの日、未開封の手紙が返ってきたのです。裏面にはアメリカ国務省の切手が貼られていました。それは彼が戦死したことを意味していました」

 万博で戦争が自分のすぐそばにあると感じたリリアンさんは、その後、弁護士となり世界的な人権団体のオランダ支部で会長も務めるなど人権活動家として活躍。2006年には団体の特使として南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領とも交流しました。今回の万博のスタッフたちも、経験をどうやって自分の将来につなげていくか考えるきっかけになったようです。
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 (今回のオランダ館スタッフ マリー・ソフィー・マーティンズさん)「パビリオンで行われたイベントで出会った人に感動しました。農業についてです。(専門学校を卒業したら)もっと勉強して別の学位を取ろうと思います」
 (今回のオランダ館スタッフ 小野光さん)「言語の壁をなくしたいという思いがあるので、ツアーや通訳を通して、人のかけ橋になれるような人になりたい」
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 ひとりひとりが今回の体験を活かしてこそ、万博を開いた意味があるとオランダのマーク総領事は話します。

 (マーク・カウパース総領事)「万博は美しいパビリオン、美しい建築が目を引きます。しかし、最も美しいのはそこで働く人々です。半年の会期で感動を与えることができますが、変化を起こすにはより長く活動しなければなりません。だからこそ、感情という“レガシー”が必要なんです」

(2025年10月3日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)