遺骨の身元特定へ…期待されるDNA鑑定
「刻む会」は遺骨の身元を特定し、遺族の元へ返すことを目標にしている。その方法として期待をかけているのが、DNA鑑定だ。

東京歯科大学(法歯学)石川昂 教授
「(Q.DNA鑑定をする上で、特に個人の特定に至りやすい骨の部位があるか?)戦没者遺骨の場合だと“歯”。歯の中の神経とよく言われる部分、そこからDNAがとれる。周囲のかたい歯の組織、象牙質やエナメル質で強固にバリアされている。大きな長管骨=大腿骨であったり、歯が出てくれば大丈夫」
「(Q.大きな骨か歯が出れば、個人特定に至る可能性が?)高いです」

遺骨の身元を特定するためには、遺族たちから採取したDNAも必要になる。「刻む会」と韓国政府は、およそ80人分の遺族のDNAをすでに集めている。
「遺骨持ってくるから、私が持ってくるから」
2025年9月、遺骨が見つかって初めての政府との交渉に臨んだ。だが、警察に引き渡した遺骨のDNA鑑定は「どう進めるか、決まっていない」との返答だった。

井上 共同代表
「DNAの取得すらまだできていないという状況に、私たちは非常に憤りに近いものを持っております」
潜水調査への協力についても、「人命に危険が及ぶ可能性がある」と退けられた。
井上さんは9月14日、韓国に渡った。韓国政府にも協力を呼びかけるためだ。

井上 共同代表
「DNA(鑑定)を最終的に日本政府が速やかに実施されなければ、韓国政府に預けて、韓国政府にもお願いしたいと(要請した)」
その足で向かった場所がある。チョン・ソッコさんの自宅だ。認知症が進むソッコさんに、井上さんは韓国語も交えながら話しかける。

チョン・ソッコさん
「ユゴル(遺骨)」
井上 共同代表
「アボジ(お父さん)かも。ソッコさんのアボジかも」
ようやく発見した遺骨。井上さんは、「私たちが見つけた遺骨だよ」とソッコさんに何度も話しかける。犠牲者に祈りを捧げたこと、海底で見つけたレンガの門、ソッコさんがすべての話を理解できているかはわからない。それでも…。

ソッコさん
「みなさんのおかげで遺骨発見して、カムサハムニダ(ありがとうございます)」
井上 共同代表
「遺骨持ってくるから、私が持ってくるから」
