相互関税や自動車関税を15%にするための、いわば条件になった80兆円の対米投資。「不平等条約」との声が上がる中、日本がすべきこととは?

車部品メーカー「9月からは増産」

「8月までは自動車メーカーの生産台数が落ちていたので、当社の生産も“8月までかなり低稼働の状態が続いていた”

こう話すのは、「マツダ」関連の受注が7割を占める自動車部品メーカーの『荻野工業』(本社・広島県熊野町)だ。

トランプ関税の影響で5月以降、製品の納品先のマツダが生産台数を減らしたため、売り上げが10~15%ほど減ったというが、ここに来て変化が…。

佐々木裕孝社長:
「9月からはマツダの生産がかなり回復してきている。当社も自動車メーカーの生産に合わせて、“9月からは8月までに比べると増産”になっている」

一方で、朝令暮改のトランプ政権に不安もあるという。

佐々木社長:
「トランプ政権は、いきなり話が変わったりすることはあり得る。日本サイドが約束したことを実行できなければ、またアメリカから新たな条件が出てくることは当然考えられる」

日本は投資先を選べない?

佐々木社長が心配しているのは、約80兆円に上る日本の対米投資の問題。

日米両国が署名した合意文書では、これを実行しなかった場合「再び関税が引き上げられる可能性」が示されている。

【対米投資 覚書】9月4日
▼投資額は5500億ドル(約80兆円)
“大統領が投資先を選び”即時利用可能な資金を口座に拠出
▼投資は2029年1月19日まで随時
▼利益は融資返済まで“日米で50%ずつ”分配し、その後は“アメリカに90%・日本に10%”分配
日本が資金を出さなければ“関税引き上げも”

また、この対米投資をめぐっては、日本側は「協議委員会」のメンバーという立場で、その上の大統領に投資先を推薦する「投資委員会」のメンバーには入っていない。

12日の参院・予算委員会では、この問題について野党から追及が―

日本維新の会・片山大介参院議員:
「日本が同意しなかった案件は、投資委員会は大統領に上げるのか上げないのか」

赤沢亮正経済再生担当大臣:
「当然戦略上あるいは法的に協議委員会で私どもの考えを伝える。懸念しているような選択肢というものが、投資委員会から大統領に上がるということはないと理解している」

また、別の議員からは「不平等」との指摘も―

立憲民主党・高木真理参院議員:
“日本企業が投資するが投資先を選べない”。日本人が入っていない投資委員会の推薦に基づいて“トランプ大統領が決める”となっている。“令和の不平等覚書”ではないかと思うが」

赤沢大臣:
「日米双方で経済安全保障上重要な分野について、米国の中にサプライチェーンを作り上げようということなので、私はwin-winの関係にしっかりなっているもので、“不平等条約というふうに呼ばれるような内容ではない”と理解している」