■Q&Aのきっかけは、全国からの激しい批判

小学校でツキノワグマについて説明する近藤さん(画像提供:秋田県)

中心になってQ&Aを執筆したのは、秋田県職員の近藤麻実さんです。近藤さんは、秋田県として初めての「野生動物の専門知識を持つ職員」として、2020年4月に採用されました。

2020年7月に秋田県自然保護課内に開設された「ツキノワグマ被害対策支援センター」で、ツキノワグマをはじめ、サルやイノシシなど、野生動物全般の対策にチームで向き合っています。

「正しく知って、正しい知識に基づいてきちんと対策すれば、無駄な衝突をせず暮らしていけると思う。ひとり一人に、正しい知識を身に着けてほしい」。そんな思いで、このQ&Aを書いたと言います。

秋田県のXでもクマについての注意喚起をしている。イラストも近藤さんが描いた

もうひとつ、市町村の職員への思いも背景にありました。

2023年10月、秋田県内の店舗の作業小屋に、クマ3頭が入りました。親子のクマだったこともあり、捕獲されると秋田県と市町村には全国からの激しい批判が届きました。

北海道でもたびたび、クマが駆除されたとき、自治体やハンターに批判の電話が殺到しています。業務にも支障が出るほどの量になることもあり、課題となっています。

近藤さんは、市町村の職員が何回も同じ説明をしなくてはいけないことを気がかりに思っていました。

自治体の職員は通常、数年ごとに異動があり、まったく野生動物の知識がない人が担当になることも多くありますが、さまざまな角度からの問いかけに一つひとつ確実に回答しなくてはいけない状況は、精神的な負担も大きいと考えたといいます。

そこで、「市町村職員の皆さんが説明に困らないといいなと思って、参考になるようなページを県で作りたいと思った」といいます。実際に市町村職員からは「活用したい」「まとめてもらって助かる」という声も届いているそうです。