最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?クマに会ったら、荷物を置いて逃げればいい?そんなウワサを聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

よくある疑問一つひとつについて、丁寧に回答している自治体のWEBページがあります。書いたのは、秋田県の職員です。

答えている質問の数は、31個にのぼります。ツキノワグマ・ヒグマの生息する全国各地にとって、参考になる内容です。書き手には、北海道でヒグマの研究をしていた経験もあります。

なぜこのQ&Aを書いたのか。話を聞くと、全国に通じる大切なことが見えてきました。(HBC北海道放送・幾島奈央)

■クマは鈴やラジオの音では逃げない?

[クマについてよくあるご意見・ご質問]は、秋田県のホームページから見ることができます。人身事故や農作物被害を防ぐための方法や、クマの生態にまつわる疑問まで解説しています。

生態についてなど、ほとんどの解説はツキノワグマにもヒグマにも共通です。

たとえば、「最近のクマは鈴やラジオの音では逃げないと聞きましたが」という質問には、以下のように回答しています。

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人の生活圏周辺に定着しているクマは、車の往来や人の活動を見慣れており、車や人から特に危害を加えられないことを学習しています。したがって、車や人と一定の距離が保たれていてクマが安全だと判断している場合は、人に気づいていてもクマが逃げないことがあります。

このようなクマの多くは、逃げないだけで、積極的に近づいてくることはありませんが、人と鉢合わせをすれば攻撃してくることが予想されます。バッタリ遭遇を避けるために鈴やラジオの音を活用してください。

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その上で、「ただし、現在入山が禁止されている地域では、鈴やラジオの音に積極的に接近してくるクマが確認されています。入山禁止地域には絶対に立ち入らないでください」と、[最新の出没情報を紹介しているページ]に案内しています。

「クマに会ったら荷物を置いて逃げれば良いと聞いていますが」という質問に対しては、以下の回答です。

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絶対に荷物を置いて逃げないでください。

荷物の中にあるお弁当やお菓子などをクマが食べた場合、そのクマは「人を脅かせば食べ物が手に入る」という学習をします。

本来であればクマは人を避けて行動しますが、このような学習をしたクマは、人から再び食べ物を得るため、積極的に人に接近するようになります。

人の荷物を狙ううちに行動がエスカレートしていき、人身事故に発展する危険性があります。クマには絶対に食べ物を与えないでください。

人と食べ物を結び付けて学習させないよう、山などに食品ゴミを捨ててこないことも重要です。

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どちらも事故を防ぐための基本的な知恵ですが、誤解して覚えてしまっていると、命とりになります。

実際に、ウワサを信じて鈴などの音の鳴るものを敢えて持たずに入山し、クマと遭遇した結果、事故に発展したケースがあります。