“撤退ドミノ”の可能性は?

今後心配なのは、“撤退ドミノ”だが、三菱商事が撤退した第1ラウンド以降、落札企業が決まっている第2、第3ラウンドはどうなるのか…?

【洋上風力事業 促進・有望区域】
▼第2ラウンド公募:秋田・新潟・長崎県沖の4海域
▼第3ラウンド公募:青森・山形県沖の2海域
▼有望区域:北海道・千葉県沖など9海域

『国際環境経済研究所』所長 山本隆三さん
「入札の方式が第2ラウンド以降少し変わったことや、値段も少し上がっているので事業者ごとに判断は異なるのではないか。ただ、『これではやれない』という事業者が出てくる可能性はある」

洋上風力促進に「2つの問題」

政府が2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の電源構成目標として再生可能エネルギーを最大の電源と位置づけ比率を40~50%とすることを目指している。
風力発電の割合も、1.1%(2023年度)⇒4~8%(2040年度)に増やすとしている。

――今の倍以上に「再生エネルギー」増やす目標だが、洋上風力なしに再エネ拡大というのは日本では成り立たない構造になっているのか

『国際環境経済研究所』所長 山本隆三さん
「太陽光はすでに相当導入が進んでいるし、それこそ傾斜地に作るとか湿原に作るとか。反対運動も起きやすい状況になっている。簡単に導入が進むのはやはり洋上風力ということでこの比率が見込まれている」

一方で山本さんは、“洋上風力発電の促進には2つの問題点”があると話す。
1つは、【費用負担が消費者にのしかかる】問題だ。

山本さん
「洋上風力の導入をこのまま増やしていこうとすると、事業者が投資をしやすい環境を作らなければいけない。例えば、今回のように突然インフレになって資材費が膨らんだ場合の補填などの制度が想定される。ただ、そのコストを誰が負担するのかというと電気の消費者。電気料金の値上げと引き換えに導入を進めるような制度になる」

すでに再生エネルギーの普及のために、電気料金に上乗せされる形で消費者が負担している「再生エネルギー賦課金」。
2025年度は3.98円/kWhで、「一般的な世帯の年間負担額」は年々増加している。
▼制度導入時の2012年度:1056円
▼2025年度:1万9104円

――今や月に約1500円の負担と、政府の電気代の補助金よりも高い額を賦課金で払っている。もはや持続可能ではないのでは?

山本さん
「2032年度ぐらいになれば少し減り始めるが、負担は当分の間は増えていくということになる。再エネ賦課金制度はドイツが世界に先駆けて始めたが、このインフレに突入して廃止し全部政府負担に変えた。なぜかというと、ドイツの負担額は1kWh当たり10円を超えてしまい、一般家庭で1年間に負担する額が3万5000円ぐらいになってしまった」