三菱商事を中心とする企業連合が、秋田県や千葉県沖の3海域で進めていた洋上風力発電事業から撤退すると発表しました。このところの建設コストの増大で採算が見込めなくなったためです。日本にとって洋上風力発電は、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー拡大の、いわば『切り札』だっただけに、今回の撤退表明で、今後の日本のエネルギー戦略には暗雲が漂っています。
三菱商事「建設費用が計画の2倍に」

27日に記者会見を行った三菱商事の中西社長は、資材価格の高騰などで洋上風力建設のコストが当初の想定から2倍以上に拡大したことを明らかにした上で、「実行可能な投資計画を立てることは困難」と、撤退の決定理由を説明しました。その上で中西社長は「地域の方々の期待を裏切る結果となり、大変申し訳ない」と地元に謝罪しました。
三菱商事などの事業連合は200億円の保証金を積み立てていましたが、没収される見通しです。三菱商事はその可能性も踏まえて、25年3月期の決算では、524億円の損失を計上していました。この間、事業環境が厳しくなっていることを踏まえ、政府もいくつかの追加支援策を用意しましたが、それでも、今撤退しなければ大変なことになるという判断に至ったものです。
政府による公募入札第1号だった3海域
三菱商事が撤退することになった場所は、秋田県能代市沖、秋田県由利本荘沖、千葉県銚子市沖の3海域で、洋上風力発電を主力電源に育てるために、政府が行った国内初の海域占用の入札案件でした。入札は2021年に他の企業グループも参加して行われましたが、結局、三菱商事が3海域すべてを落札、当時大きな話題となりました。
入札は、完成後に洋上風力で発電した電気をいくらで電力会社に供給するかという売電価格を基準に行われ、三菱商事の示した価格が、群を抜いて安かったため、すべてを落札したのでした。