蛇行の引き金「偏西風のズレ」 根本原因は"分かっていない"?

黒潮が蛇行する直接的な引き金と考えられているのが、上空を流れる「偏西風」の存在です。専門家によると、長期的にみて偏西風が流れる場所が少しずつ北上しているといいます。そのため黒潮の推進力の一部は、北へずれることでその力が弱まります。結果、海底や陸の地形といった他の要因と組み合わさり、黒潮が大きく蛇行することになるのです。また、蛇行した流れの内側には冷たい水の塊である「冷水渦」が発生し、これが蛇行をさらに安定させる一因にもなっています。

では、そもそもなぜ偏西風は北上したり、南下したりと位置を変えるのでしょうか。この根本的な原因については、専門家も「はっきりとまだ科学的に分かっていない」のが現状です。

大蛇行「終息」で何が変わる?気候と食卓への影響は

2017年8月から7年以上にわたって続いてきた黒潮大蛇行ですが、気象庁によると、2024年5月8日時点で蛇行が見られなくなったと報告され、4月に終息したことが発表されました。私たちの生活や、特に気候にどのような変化が起こるのか、専門家に聞いてみました。

関西地方では、夏がこれまで以上に暑くなり、雨量が増える可能性があります。大蛇行の間、黒潮は紀伊半島から大きく離れていましたが、終息すれば再び沿岸に近づきます。ただ、大蛇行が関西の暑さを和らげていたという明確な研究結果はなく、断定はできないようです。

気候とともに気になるのが、食卓への影響です。大蛇行によって不漁が続いていたシラスや伊勢海老などが、また獲れるようになるのではないかと期待が高まります。しかし、専門家は「そう簡単にはいかない」と指摘します。大蛇行が続いていた約8年の間に、地球温暖化の影響で海水温そのものが変化しており、一度変わってしまった魚の生息域や漁場が、海流が元に戻っただけですぐに回復するとは限らないからです。