黒潮だけが安定して蛇行する3つの理由

数ある海流の中で、長期間にわたって安定した「蛇行」を見せるのは、実は日本の南岸を流れる黒潮だけだといいます。その理由は、以下3条件が奇跡的に重なっていることにあります。

1 海流の流れが特に強い場所であること

地球の自転などの影響により、北半球の時計回りの海流は、その西側で流れが強くなる性質があります。日本列島の南岸は、ちょうどこの「西側」にあたり、黒潮は世界的に見ても非常に勢いの強い海流となっています。

2 地形が複雑で急カーブしていること

ただでさえ流れが強い黒潮ですが、日本列島の南岸に沿って流れるため、高速で走る車が急カーブで不安定になるように、強い流れが複雑な地形を進むことが、蛇行を生み出す一因となります。

3 海底の地形が非常に複雑であること

決定的なのが海底の地形です。黒潮が流れるルートには、水深4000メートルもの深海から、急に水深500メートルほどまで浅くなる、まるで巨大な「海底の壁」のような場所が存在します。この複雑な海底地形が、下層の流れを乱し、海面まで影響を及ぼして大きな蛇行を引き起こすのです。
3つの条件がすべて揃っている日本の近海、特異な環境こそが、黒潮が大きく安定して蛇行する理由なのです。