■「行かなくて良かった・・・」豪州訪問断念の裏に総理の安堵 

オーストラリアへの外遊が2日後にせまった1月4日。岸田総理は官邸で秘書官らを囲み、行くべきかどうか悩んでいた。国内ではオミクロン株が急速に拡大している。去年の暮れは地元・広島への帰省は自粛したのに、外遊にいくことに国民の理解が得られるのだろうか。

一方で、豪・モリソン首相からはどうしても来て欲しいと熱烈なラブコールがあった。総理は「外遊はアメリカが最優先」と決めていたが、米・バイデン大統領との会談はいっこうにメドがたたない。今回検討していた豪州訪問は、自衛隊と豪州軍が互いの国で共同訓練などを実施する際の手続きなどを定める「円滑化協定」の署名という大きな意義があった。外交で成果を出したい総理にとって、豪州外遊で「実」をとるべきかどうか・・・。

「やっぱり行くのはやめよう!リスクが大きすぎる」

秘書官らと考え込むこと約10分、総理自らが下した結論だった。
5日、都内ホテルでの講演を終え、車に乗り込んだ総理は秘書官から国内の感染状況の報告を受けた。沖縄の感染者数は623人、前日の4倍近くにまで跳ね上がり、東京も390人と前日の倍以上に膨れあがっていた。これを聞いた総理は車の中でこう呟いた。

「オーストラリアに行かなくて本当によかったな・・・」

■ボトムアップに力点、変わりゆく「霞が関」と「党本部」との関係

どの政権も世間の反応を気にするのは当然のこと。国政選挙が近いとなるとなおさらだ。しかし、世論あるいは野党の反応を見て、即座に政策を変更する「変わり身の早さ」は岸田政権の大きな特徴と言える。

1月11日、総理は在職100日を迎える。私はこの内閣をわずか100日間みてきただけだが、直近の菅内閣、あるいは安倍内閣と色合いが随分違うことを感じている。むしろ、両政権を反面教師にしているのでは?と思うこともしばしばだ。
岸田総理は、安倍、菅政権時代に行きすぎた官邸主導を是正すべく、この100日間はトップダウンよりもボトムアップに力点を置いてきたように思う。これによって官邸と「霞が関(=省庁)との関係」、「党本部との関係」が随分変容してきた。