「過去は過去、今は今」 “未来志向”の考え方浸透

互いの国の文化に強い関心がある生徒たちだが、日韓の歴史・過去についてはどう考えているのだろうか。

「さっぽろ雪まつりに行ってみたい」と語るコ・ハヨンさん

歴史に関心がある韓国人のコ・ハヨンさん(高3)は、学校で日韓の歴史について学んだ時のことをこう振り返った。「日本が悪いことをしたと知り、そこまでしなくて良かったのにと思った。侵略したとしても、隣の国だからもう少し仲良くしながらやればよかったのにと、少し怒りを感じた時もあった。でも、実際に日本人と接する中では、悪い印象を抱くことはない」

ユン・ジェミンさん(6月に海外の高校卒業)は、「『あれ』(日本による統治)について(韓国の)中学校の授業で学んだ。別に何も感じなかった。歴史は歴史だし、過ぎたこと。だから、未来に向かっていったほうが今はいいんじゃないかなって思う」と語った。

入国審査官になるために「日本語をさらに上達させたい」というキム・リエさん

母親が日本人、父親が韓国人で韓国在住のキム・リエさん(高1)は、日本が朝鮮半島を統治していたことを母親から聞いたという。その話を聞いた時にどう感じたかを尋ねると、「『なるほど』と。嬉しくもないし、いやでもないし。『そっか』って感じだった」と率直な思いを明かした。

日本人の中畑咲紀さんは「学校の授業で伊藤博文暗殺事件などについて習った」と話したうえで、「そういう過去はあったんだなと思うが、実際見てないから、頭の片隅に置いて、それを踏まえて韓国を好きという感じ。文化的に尊敬している」と語った。

生徒たちの話から、若者の間で、過去の出来事・歴史を知りながらも「過去は過去、今は今」と考えて「未来」に重きを置く「未来志向」の考え方が広まっている現状が垣間見えた。

「若者は互いの文化が好きだけど、政治家はそうはならない」「争いながらの解決には賛成しない」 高校生が考える今後の日韓関係

李在明大統領も就任して以降、日韓の「未来志向的な発展」を目指していく主旨の発言を繰り返している。ただ過去には、福島第一原発の処理水放出を非難する発言をしたり、日本を「敵性国家」と表現したりと強硬的な姿勢をみせていた。専門家の間では、李大統領が日本への姿勢を変えた背景には、日本に好意的な若者の増加や、北朝鮮、中国、ロシアなど周辺国の脅威が強まっていることがあるとの見方もある。

韓国の世論形成に強い影響を与える大統領の今後の動きに注目が集まるが、日々SNSやコンテンツ、旅行を通じて互いの国と身近に接している生徒たちに、日韓関係の「今」と「今後」についてどう考えているのかも聞いてみた。

ユン・ジェミンさんは今後の日韓関係について「李在明大統領は日本に対してネガティブな印象なので、不安定になるんじゃないかなと思い、心配している。いまは日韓の若者は両方の文化が好き。でも政治家はそういう気持ちにならないのだろう」と懸念を示した。

中畑咲紀さんは、「政治面ではちょっと良くないのかもしれないが、文化的な交流に支障は生じていないと感じる」と自らの経験をもとに述べた。

「日韓の交流に関わる仕事をしてみたい」と夢を語る李臾池さん

「やっぱり韓国でも日本でも問題が色々あって、仲良くできるのかまではわからない。不安定だと思う」と答えたのは、母親が韓国人、父親が日本人で日本在住の李臾池(イ・ユジ)さん(高1)。「だからこそ韓国の大学に行って、そこで学んでから日本に戻り、さらに交流を深めたい。日韓の交流を大事にして、社会に活かしたい」と語った。

コ・ハヨンさんは、「歴史的な問題は課題として克服していかなければいけないと思っているが、争いながら問題を解決することには賛成しない。もっと良い方法でやれないかなと思う」と話した。

韓国のゲームで盛り上がる参加者たち

キム・リエさんは日韓の更なる関係改善に期待を寄せた。「クラスの約半数が日本の文化に興味がある。韓国も日本の影響を受けていて、他の国より一番仲良しな国だと思う。いま以上に仲良くなれればいいなと思っている」

生徒たちの多くは、現在と今後の日韓関係について、歴史問題と自分たちが行っている交流を明確に分けて考えているようだった。彼ら/彼女らは、これから社会に出て、それぞれ日韓の社会を担っていく。こうした市民による文化交流や草の根での対話は今後も日韓関係に大きな影響を与えていくだろう。