海外遠征で前半のスピードアップに収穫
青木が個人種目出場を回避したのは、「飛行機に8回も乗った」という海外遠征から帰国した2日後だったからだ。「着いた日にウエイトトレーニングをして、昨日は普通に練習をしてこのレース(4×100mリレー)に臨みました。(チームは6位だったが自身の)走りは良かったんじゃないかと思っています」と、納得の表情を見せた。
ポーランド1試合、ベルギー2試合を転戦し、記録的な収穫はなかったが、外国選手を目の前で見たことで得るものがあった。
「前半のスピードやストライドの大きさとか、ウォーミングアップも含めて目の前で見て、すごいと思いました。世界陸上にもし選ばれたら、良い経験になることだったと思います」
青木は高校時代に前半を飛ばし、後半で大きく失速した経験があり、その後は前半からスピードを上げる走りができないでいた。51秒71を出した5月の静岡国際は、外側のレーンの松本を追うことで、リラックスしながらスピードを出していた。その後はケガもあってその走りができていなかったが、今回の海外遠征が良いきっかけになった。
「帰国翌日(トワイライト・ゲームス前日)に300mを走りましたが、前半から行けるようになりました。1人でも最初からスピードに乗る走りができたので、海外で得たものが出てきたんじゃないかと思います。動き自体も良くなっていると、先生(日体大・大塚光雄コーチ)から言っていただきました」
代表入りすれば21歳。取り組んでいる自身のレースパターン変更が、外国勢に挑むことで身に付けば今後がさらに楽しみな選手になる。
男女混合4×400mリレーで決勝進出の可能性も
男女混合4×400mリレーに日本が出場した世界陸上は、19年ドーハと22年オレゴンの2大会。ドーハは予選2組8位、オレゴンは予選1組8位と予選でも下位に沈んだ。男子の4×400mリレーはオレゴンとパリ五輪で入賞し、世界で戦うレベルを維持している。
男女混合4×400mリレーでは女子の、世界との差が結果に表れてしまっている。
日本記録は23年アジア選手権で出した3分15秒71で、松本が4走だった。個人タイムの比較では、23年の女子選手2人のシーズンベスト合計は1分46秒86だったのに対し、今季は1分43秒85と3秒01も上がっている。机上の計算ではあるが、女子選手の成長だけで3分12秒70を出す力が今の日本にはある。
松本は男女混合4×400mリレーにも思い入れがある。200mでリレー候補競技者基準記録を破っている井戸は東邦銀行の後輩で、400mで破っている自身と青木は静岡県出身。混合4×400mリレーを走るかどうかは未定だが、同学年の佐藤風雅(29、ミズノ)は男子4×400mリレーの代表常連である。
「自分が関わったり、お世話になったりしてきた方たちが多いので、男女混合ではありますが良いチームで戦えると思います。例年より女子も各々力を付けているので、女子も貢献というか力を出し切って、男子と一緒に良いレースをしていきたいです」
青木はトワイライトゲームスが、青木姓に変わって以後の国内初レースだった。「漢字で自分の名前を見ると、『日本人になったんだ私』って実感が湧きました」と嬉しそうに話した。リレーに対しても「年上の方ばかりになると思いますが、迷惑をかけないようにして、みんなで日本記録を狙っていけたら、と思います」と意気込んだ。
ブダペスト大会の男女混合4×400mリレーは、予選で3分13秒台の2チームが決勝に進んでいる。世界陸上本番で3秒も日本記録を更新することなど、普通はあり得ないが、今の日本にはその勢いがある。男女混合4×400mリレーも、世界と戦う時が来た。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















