■陸上・第20回トワイライトゲームス(20日、日産スタジアム)
女子400mは松本奈菜子(28、東邦銀行)が52秒41で優勝。8月19日時点のRoad to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)で、この種目の東京2025世界陸上ターゲットナンバー(出場枠)の48人以内には入っていないが、代表選考要項である「ターゲットナンバーに10を加算した順位以内」には位置している。8月27日に決定予定のRoad to Tokyo 2025の最終順位次第で代表入りが決まる。
また青木アリエ(21、日体大3年)は、ペルー国籍だった今年5月に400mで51秒71と、日本記録(51秒75)を上回った選手で、6月に日本国籍を取得した。今大会は海外遠征から帰国直後のため個人種目は欠場し、4×100mリレーに4走として出場した。
日本陸連が設定したリレー候補競技者基準記録を、400m(52秒20)で破っているのは松本と青木の2人。200m(23秒19)で破っている井戸アビゲイル風果(24、東邦銀行)を含めても3人だけだ。青木の男女混合4×400mリレー代表入りも有力視されている。
故障から復帰後のプロセスに好感触
国内強豪選手が揃ったわけではなかったが、松本は2位に10m以上の大差をつけた。優勝記録の52秒41は自己記録の52秒14(日本歴代2位)に迫る好記録だ。走りにも、400mのフィニッシュ前でよく見られるフォームの崩れがなかった。
「前半シーズンの終わりで一度ケガ(その影響で日本選手権は4位)をしたところから、感覚などが戻ってきたので、改善できた部分が出ていたと思います。最後の100mを上手く走れたら、と話し合っていましたが、そこはちょっと耐えられた、くらいの走りでした。もう少しスピードに乗る感じが出せたらよかったですね。前半あっての後半なので、後半がきちんと走れる前半の作り方をすることも必要です。52秒5をギリ切るのではなく、52秒少しくらいのタイムが狙えましたね」
走りの細かい部分では課題が残ったが、故障から世界陸上に向かって行く流れには乗れている。
世界陸上参加標準記録は50秒75で、日本記録とはちょうど1秒差。可能性はゼロではないが、有効期限の8月24日までに突破する日本人選手が現れるとは考えにくい。参加国枠で松本が代表入りする可能性は大きい。松本は過去の世界陸上では、22年オレゴン大会に男女混合4×400mリレーで出場している。
「(Road to Tokyo 2025の)世界ランキングで入ることができず、世界で戦うにはまだ実力不足なのですが、チャンスをもらえるなら、今出せる最高のパフォーマンスということでは、日本記録の更新を世界大会でしたいと思います」
松本は9月3日で29歳になる。この年齢での初代表入りは稀で、それだけで大きな価値がある。だからこそ松本は、出るだけで終わるつもりはまったくない。「個人での代表は初めてですが、そこは強い気持ちをもって臨みたいです」。
女子400m日本記録の51秒75は、松本のチームの先輩である丹野麻美が、08年に出したタイム。400mの世界陸上代表も過去、丹野1人しかいない。丹野は05年ヘルシンキ、07年大阪、09年ベルリンと3大会連続で出場し、大阪大会では準決勝に進出した。
23年ブダペスト世界陸上の、予選各組を3位以内で着順通過した選手の最低タイムは51秒76だった。51秒3台で通過できなかった選手もいたので断言はできないが、松本が世界陸上の予選で日本記録を更新すれば準決勝に進む可能性がある。