変わり果てた娘の姿「初めて抱っこした時の重さよりも軽い」

しばらく経ってから、岡山西警察署から電話がありました。

(加藤裕司さん)
「『お嬢さんの遺体をお預かりしてるんですけど、どうなさいますか』という連絡でした」

「『ああそうか、預かってもらってたんだ』と思って、『妻に一緒に行こう』と言ってたんですけど、妻は『もう、よう行かない』って言っていました。息子にお姉ちゃんを迎えに行こうということで行きました」

「迎えに行くと、50cmぐらいの発泡スチールに、透明なビニールに遺体の一部がくるまれておりました。遺体の部分というのは腰回りのごく一部のみでした」

「テープで止めてあったので、テープを剥がしていただいて、持ち上げてもいいですかということで持ち上げてみました。色は、もうドス黒く変色して、これが人間の肉体かと言われたら、誰も見た目では分からないだろう、ぐらいの感じでした」

「持ち上げた感触は、私が娘が生まれて初めて抱っこした時の重さよりも軽いなという気がしました。『なんでこんな目に遭わないといけないのか、いったい何を悪いことをしたというのか』という思いが駆け上がってきて、涙が止まりませんでした」

「できることなら自分が代わってやりたい、それもできない自分が情けないなとつくづく思いました」

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「息子もおそらく、同じような思いだっただろうなと思います。早く葬儀をあげてやらないといけないな、ということだったので、その帰りに斎場に予約を入れ、金曜日がお通夜、土曜日が本葬という形をとらせていただきました」

「斎場からは遺体が小さいので、『赤ちゃん用の棺にしましょうか』と言われたんですけど、断って大人用の棺に入れていただきました」

「これは妻がものすごく反対しておりまして、実は私は世間に隠れてひっそりと葬儀を行おうと思っていたんです。家族葬でやろうかなと思ったんですけど、妻が猛反対しまして」

「『何も悪いこともしてない娘が、この世の最後でなんで人に隠れてそんな葬儀をしなきゃならないんだ』と。最後なら、盛大に葬儀をやるべきだと言ったので、そうさせてもらいました。その通りだなと思って」

「私は、昔勤めてたサラリーマンをしてた時の会社と、その時にお世話になってた会社の2か所だけ電話を入れました。妻は、娘と小学生から大学まで一緒だった親友の子だけに電話を入れました」

「その子は『みんなに連絡していいか』と言ったので、『お願いします』と連絡していただいて、びっくりしたんですけど、約650名の方に参列していただきました」

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そして、この1年4か月後に裁判員裁判が始まりました。加藤さんは検事から知らされた内容に愕然とするしかありませんでした。

【第3回】に続く。