80年前、旧日本軍の命令で殺処分された、エリーと呼ばれるゾウが熊本にいました。その事実は絵本や写真で現在も伝えられていますが、80年の時を経て、新たに「生前の映像」が見つかりました。
熊本県立美術館に運び込まれたのは、ゾウの下あごの骨。かつてあった熊本動物園で旧日本軍の命令で殺された、エリーのものです。

8月19日から始まった戦後80年の企画展では、エリーを題材にした絵本『ごめんねメリー』の原画も展示されています。
描かれた象の最期 大好きなサツマイモを口にすると――
作者の一人、熊本市東区の岩下俊子さんは語ります。
岩下俊子さん(82)「こんなことがあったと本当に知らなかった。動物まで殺されたと知らなかった。それが原点です」
敗戦が色濃くなった国内では、全国の動物園で「檻から猛獣が逃げ出しては危ない」と、殺処分の命令が下されたのです。

この悲惨な事実を伝えようと、岩下さんたちが1988年に『ごめんねメリー』を制作しました。
物語の中ではエリーではなく『メリー』という名前で登場するゾウの最期は、こう描かれています。
『メリーは 飼育係のおじさんが差し出すさつまいもを うれしそうに目を細めて食べました。
最後のさつまいもは 長い竹ざおに さしてあります。
それを口にしたとたん 強い電気が 体じゅうを一気にかけぬけました。』

岩下さん「こんな悲惨なことを自分たちの代には作らないようにしようと、戦争はいやだという声をあげなければ」