倉庫のような場所に馴染みのあるポストのマーク。ここに投函されるのは郵便物ではなく、なんと駆除した鹿です。鹿の農業被害に悩まされている兵庫県多可町に設置されています。このポストに入れられた鹿はその後どうなるのでしょうか。取材しました。

農作物被害深刻な町に登場した鹿ポスト

 町の総面積の約8割が山林という兵庫県多可町。
 のどかなこの場所に現れたのが巨大なポスト。郵便マークの横には「鹿」の文字があります。
 ここに投函されるのは地元の猟師が仕留めた野生の鹿です。

 (猟師)
 「ワナとか銃で捕った鹿をみんなここに入れるねん。きょうは猟友会が捕った鹿が2頭入っているはずです」

 24時間鹿を持ち込める、その名も『鹿ポスト』。このポストが設けられた背景には町が抱える問題がありました。
 多可町で農家を営む藤岡啓志郎さん(28)。自身の田んぼで酒米の「山田錦」を育てているのですが、収穫の時期にもかかわらず稲穂がほとんど付いていません。
 (農家 藤岡啓志郎さん)
 「稲穂が無くなってしまっている。本来はずらっと長く稲穂が、稲にお米さんがついて垂れ下がっているところを、全て食べて…。ほとんどカスカスになってしまっている。賢いのでよく知って、実る時期になると山から下りてきて食べちゃう。この圃場2枚だけでも20~30万円の被害は出ています」

 原因は鹿です。多可町では、去年は約500万円の農作物被害が出るなど、かねてから鹿の被害に悩まされてきました。