東京2025世界陸上代表に内定している村竹ラシッド(23、JAL)が、12秒92(追い風0.6m)というすごいタイムを叩き出した。8月16日に9.98スタジアム(福井県営陸上競技場)で行われたAthlete Night Games in FUKUI2025・2日目の男子110mハードルでのこと。村竹の記録は、自身と泉谷駿介(25、住友電工)の持っていた13秒04の日本記録を0.12秒も更新し、アジア歴代2位、世界歴代でも11位タイというレベルの高いタイムだった。世界陸上本番でのメダル獲得への期待が高まったが、村竹を指導する山崎一彦コーチ(54、順天堂大学監督)は、記録だけで判断することの危険性にも言及していた。
12秒台のレースをどんな感覚で走っていたのか
フィニッシュした村竹はスタンドの歓声に何度も応えたが、単純な喜び方とは少し違い、感極まっている表情にも見えた。レース後の村竹のコメントからも、12秒92という数字に自身も驚いている様子が伝わってきた。「まさかここまで出るとは思わなかったです。今年はアベレージが13秒15くらいなので、13秒0台は出したいと思っていました。120点、140点くらい付けてもいいんじゃないかと」
今大会の会場は17年に桐生祥秀(29、日本生命、当時東洋大)が、日本人で初めて9秒台を出したことにより「9.98スタジアム」と命名された。村竹は予選と決勝の間に順天堂大学の後輩たちと、「12.98スタジアムに変えたいね」と冗談で話していたという。おそらく12秒9台前半まではイメージしていなかったのだろう。
世界でも過去11人しか経験していない12秒台。そのレースを走っている最中の感覚については、以下のように話していた。「スタートは“良い時の自分”という感じでしたが、中盤の4、5台目あたりで勢いに乗ることができました。際限なくスピードが上がって行く感じで、“これは記録が出るだろう”と感じていましたね。後半も(踏み切り位置がハードルに近づきすぎないように)しっかり刻んで走り切ることができましたし、ハードルを10台跳んでもいっぱいの状態にならず、あと2、3台あっても同じ勢いで走れると感じていました。(13秒台とは)中盤からのスピード感がまったく違って、もう新感覚でした」
パリオリンピック™金メダルの12秒99、一昨年の世界陸上ブダペスト金メダルの12秒96ともに上回っているが、特定の大会との比較は気象条件が違うので評価の仕方としてはよくない。その年のベスト記録での比較であれば、コンディションの良い大会を走った時の比較になるので参考になる。12秒92は前述のように今季世界リストで2位、24年世界リストで2位相当、23年1位相当、22年2位相当、21年2位相当となる。
今回の記録を出したことで村竹は、世界陸上金メダル候補の1人に挙げられそうだ。