兄さんは死にます

巣鴨版画集より

妻の両親へ綴ったあと、妻の弟、妹に宛てて書いている。

<冬至堅太郎が判決前に書いた別れの文 1948年12月28日>
兄さんは死にます。

兄さんらしい事を何もなし得なかった事を深くお詫びします。日本を敗戦の悲惨な運命から救うものは、君たち青年の正しい信念と努力によって、はじめて可能です。将来たどる路は別別でも、常に助け合い励まし合って進んで下さい。

可哀そうな姉さん坊やたちを、皆の温かい兄弟愛の囲いの中に入れて、絶えず励まして下さる様にお願いします。

兄さんの三年の獄中生活で得た体験は皆にも何かの参考になると思いますから、返送した日記を読んで頂きたいと思います。

ご健闘を祈ります。堅太郎


翌日、冬至堅太郎に宣告されたのは死刑だった。冬至が遺した日記を軸に、その生涯を描いたドキュメンタリー映画「巣鴨日記 あるBC級戦犯の生涯」(RKB毎日放送製作)は、8月15日(金)から福岡市警固のキノシネマ天神で上映される。