「三国志」をモチーフに描かれた阿武松の錦絵
この錦絵は「英雄見立三国志」と名付けられた作品で、阿武松緑之助のほかに緋縅力弥(ひおどし りきや)、稲妻雷五郎(いなづま らいごろう)といった当時人気の横綱や大関も描かれています。
阿武松の両隣に緋縅と稲妻が並んでいるのですが、これは劉備、関羽、張飛が義兄弟になることを誓った「桃園の誓い」の場面を示しているとされています。
阿武松が劉備、稲妻が関羽、緋縅が張飛になぞらえられているということです。
錦絵では、阿武松は盃を持ち、目の前には豪華な食事が並んでいます。


石川県立歴史博物館・学芸員 吉田朋生さん「モチーフとなった三国志の桃園の誓い、義兄弟の契りを交わすということで盃を暗示しているのではないかと思います。力士の大食いだというイメージを表したようなモチーフだと思います」
単なる「人気力士のプロマイド」のようなところにとどまらず、三国志をモチーフにするあたり、テーマが明確になっている錦絵といえます。

石川県立歴史博物館・学芸員 吉田朋生さん「歌川国貞のひとつの特徴かなと思います。こうした三国志の人物を、美人画ですとか力士の絵として見立てて表現するという、国貞のひとつ遊び心が表れている作品かなと思います。」