広島の惨状を世界へ 海外向けの原爆ドキュメンタリーを制作
高柳キャスター:
そして中根アナウンサーは、国内外に80年前の広島の惨状を伝えていく、様々な活動を続けています。

中根アナウンサーの祖母が広島で被爆しました。祖母と広島の地を一緒に巡り、被爆体験を聞くドキュメンタリー番組の制作。また、海外に向けた原爆ドキュメンタリーを制作し、英語のナレーションも担当しています。
被爆体験についてのドキュメンタリーを制作した経緯や内容について教えてください。

中根夕希アナウンサー:
これまで家族にも被爆体験を詳しく話してこなかった当時91歳の祖母ですが、「終活の一つとして、被爆体験について手記を書いたんだよ」と教えてくれたことをきっかけに、取材をすることになりました。
私自身、祖母の被爆直後のことや、焼け野原を歩き回り家族を探した、という話を初めて聞いたとき、教科書の中では聞いた話でしたが、祖母から原爆の話を直接聞くことにより、「あの焼け野原の中に祖母がいたのか」と急に身近に感じるようになり、価値観が変わったと思いました。
広島で取材を続ける中で、「被爆者本人の言葉ほど訴える力のあるものはない」と毎年感じています。
被爆80年の2025年、被爆者の平均年齢は86歳を超えました。取材した祖母は97歳になります。今思うと、このときのように広島の街を一緒に歩くことがもうできないと思うと、あのタイミングだったからこそ聞けた話だと感じています。「今、聞くことのできる被爆者の言葉を大事にしなければ」というのを毎年痛感しています。

また、現在の世界情勢を見ていると、「果たしてこの80年間被爆者が訴え続けてきた言葉が、この核兵器の恐ろしさというのが世界にちゃんと伝わっているのだろうか」と感じてしまうところがあり、これまでRCC(中国放送)が取材してきた被爆者の方々の声をまとめ、海外の方に向けた英語のドキュメンタリーを制作しました。
今しか聞くことのできない被爆者の声もある一方、核の脅威が高まっている今だからこそ、記憶が鮮明なときに語ってくれていた、今は亡き被爆者の伝えたい声というのもあります。
このような世界情勢の中で、広島では原爆資料館の来館者数が過去最多を毎年更新するなど、改めて広島でどんな被害があったのか、目を向ける人が増えているように感じています。
ただ、広島に来られない人もいるので、こういったドキュメンタリーを見ることで、海外にいながら原爆の歴史を学んだり、被爆者の声を届けられるものになっていけばいいなと思っています。
どう語り継げばいいのか、次の世代にどう伝えていけばいいのかが課題となる中で、国内のみならず、海外でも核問題への理解が広まっていってほしいと思っています。
井上キャスター:
中根さんが作ったドキュメンタリーは、どこにアクセスすると見られるものなんですか?
中根夕希アナウンサー:
RCCのホームページで見ることができます。「RCC」「英語ドキュメンタリー」と検索していただければ、直接アクセスすることができます。
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<プロフィール>
中根夕希
RCC(中国放送)アナウンサー
広島で被爆した祖母のドキュメンタリーなどを制作
三宅香帆さん
文芸評論家 31歳
著書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で「新書大賞2025」受賞