未来につながる動きも

神戸:お孫さんが語り継ぐためにXのアカウント「佐藤ハルエの孫 黒川の女たち」(@satoharue_tunag)を作っているんですね。これも素晴らしいと思いました。それと、松原さんは8月26日に本を出すのですね。
松原文枝著『刻印 満蒙開拓団、黒川村の女性たち』(KADOKAWA、税込み1,870円)
戦時下、国策により満洲に渡った岐阜県黒川村の黒川開拓団は、日本の敗戦が色濃くなる中、生きて日本に帰るためにと敵であるソ連に助けを求め、その見返りとして18~22歳の女性たちを差し出すことにした。身も心も傷を負いながらも、帰国後は差別や偏見にさらされてきたが、女性たちは手を携えて堂々と声を上げ続けた。なぜ「あったこと」は「なかったこと」にされてきたのか。歴史に残すことが何を生み出すのか――。著者はディレクターとして、映画監督として黒川に足を運び続けた。共同体が史実を認め、女性たちが尊厳を回復するまでを描くノンフィクション。
松原:この映画の背景に加え、女性たちが状況をなぜ変えることができたのか、そのまま書かせていただいています。やはり彼女たちが背負ってきたものは大きいのです。
神戸:最後に、RKBラジオのリスナーさんに一言。
松原:映画を作って「こんな希望があるんだ」ということを知らされました。稀有な事例だと思いますが、一つの救いでもあり、希望を感じていただけたら、と思います。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種サブスクで視聴可能。5月末放送のラジオドキュメンタリー『家族になろう ~「子どもの村福岡」の暮らし~』は、ポッドキャストで公開中。