認識のズレの背景に“合意文書なし” 一体なぜ?
高柳キャスター:
こうした二国間のズレは、なぜ生じているんでしょうか。

TBS報道局経済部 竹岡 記者:
理由の一つは「法的拘束力のある合意文書がない」ことです。なぜ作らないのか。これには“スピード感”を大切にする日本政府の思惑があります。
高柳キャスター:
合意文書を作っていた場合、何が起きていたのでしょうか。

TBS報道局経済部 竹岡 記者:
日本側は、合意文書の作成は「損」だと判断しました。合意文書を作るには時間がかかります。イギリスだと1~2か月ほどかかり、その間も高い関税が課されました。
ある自動車メーカー幹部は「1時間に1億円損し続けている。一分一秒でも早く関税を下げて欲しい」と言っています。そのため日本は「文章作成の時間があるなら、早く関税を下げる」という戦略をとりました。
日比キャスター:
他の国とは文書を作ってないのでしょうか。
TBS報道局経済部 竹岡 記者:
イギリスは合意文書を作成しましたが、ベトナムやフィリピン、EUとは現時点で合意文書を全く作られていません。
日米合意で日本が一番恐れたのは、合意文書の作成までに、閣僚間や首脳間で詰めの協議が必要なことです。
トランプ大統領は交渉の達人で、1交渉する度に“1おみやげ”=譲歩を求めてきます。日本側からすると、「せっかく良い合意がまとまっているのだから、これ以上やぶへびな形で新たな取引を持ちかけるのは避けたい」と考え、今回は合意文書を作りませんでした。