ロケットの発射場となる「スペースポート(宇宙港)」を軸に、「高知に宇宙産業を興そう」という壮大な構想が、今、注目されている。プロジェクトを進めているのは、中学・高校でサッカー部の同級生だった2人の男性。「宇宙兄弟」ならぬ「宇宙蹴友」は、2029年度の運用開始を目指して奔走している。
きっかけはSNS 同級生どうしの思いがひとつに
2025年2月、高知に「宇宙港」を建設することを目指す会社「スペースポート高知」が設立された。発起人は、高知市でホテルを経営する古谷文平さん(40)と、ニュージーランドで宇宙事業に携わる小松聖児さん(41)だ。
2人はともに高知出身で、同じ中学・高校で過ごした同級生。そして2人とも、中学・高校時代はサッカー部に所属し、“蹴友”として共に汗を流した。

高校時代は「いつか一緒に仕事ができたら」と語り合うほどの仲だったという2人だが、卒業後は別の大学へ進学し、その後も別々の道を歩んでいた。
そんな2人が高校を卒業してから20年以上の時が流れた時、2人の運命を変える出来事が訪れた。2024年4月、古谷さんが「スペースポート構想」をSNSに発信したのだ。その投稿は次のような内容だった。
「高知は、実は“あるもの”にうってつけの場所になると信じている。そう、宇宙港=スペースポートだ。スペースポートとは、文字通り、宇宙に飛び立つ港だ。この港から、宇宙に人や物資を送るロケットが発射される。宇宙港は多くの人の利用が見込めるし、その周辺には、宇宙や未来を感じられる体験施設も期待できる」
「広大な海を眺めながら、まだ知らぬ“外の世界”に夢を馳せる。20世紀までに海が果たした役割は、宇宙に引き継がれるのかもしれない」
古谷さんは、この構想を「妄想レベルではあるが」としたうえで発信した。ところが、それに即、反応した人物がいた。それが同級生の小松さんだった。
小松さんは、その投稿にひと言「やったるかい?」とコメント。高校時代、「社会人になって、いつか一緒に仕事ができたら」と語り合っていた2人の、記憶の片隅にあった“夢”が、SNSの投稿をきっかけに“現実”となった。
こうして止まっていた時計の針が動き出したように、“2人の挑戦”が始まった。