上司の性加害で…新人弁護士の死 法曹界からこそ「声を上げにくい」

事務員ではなく、弁護士自身が被害者になるケースがあった。

大分県中津市の法律事務所で、入所して間もない新人の女性弁護士が当時代表だった清源善二郎元弁護士から、性的な加害行為を受けた。

事務所の2階にあったプライベートルームで2015年ごろから少なくとも2年以上、繰り返し被害に遭った。

女性弁護士は精神的に不安定な状況に陥り、自宅のアパートで自ら命を絶った。弁護士になってわずか3年半。32歳だった。

あの日を忘れないために。同じ大分県の女性弁護士たちは、毎月27日の月命日に集まっている。

参加した弁護士
「みんな自分と彼女の思い出や、抱えている誰にも言えなかった思いを言う」

弁護士同士で起きた性加害。声を上げようとしても、弁護士の世界特有の難しさがあるという。

中村多美子 弁護士
「他の会社でハラスメント被害があったら、弁護士相談や外部の窓口があるが、ここは最終的な紛争解決の最後の砦みたいなところ。原告側にも弁護士がつく。被告側にも弁護士がつく。身内で身内の手続きをやっていく、非常に難しさがあります」

平松まゆき 弁護士
「今回の判決がニュースになったときに、コメント欄に『この弁護士は弁護士なのに自分で処理できなかったのか』と。こういう問題があったときは、普通弁護士に依頼をするんだから、いろいろな手段を知っていたはずなのに、なぜ弁護士が追い込まれてしまったのかというコメントが、本当に多くて。私むちゃくちゃショックだったんですよね。

特に、私たちのような小さい田舎の単位会は、全ての弁護士の顔がわかります。何かをやってるときも、相手の代理人の顔が浮かんだりして、遠慮がちになったりすることもある。私たちこそ中々声を上げにくい」

大分県とは別の、ある弁護士団体がセクハラについて行った内部アンケートの結果がある。

所属する弁護士からセクハラを受けたことがあるかという問いに「はい」と答えたのは、回答者のうち22.9%。見聞きしたことがあると答えたのは、71.4%にのぼった。

「『君の事務所は、女性は顔採用だが、よく採用されたね』と言われた」(被害を受けた人・アンケートより)
「老齢の男性弁護士が女性弁護士にキスを迫った」(被害を見聞きした人・アンケートより)

参加した弁護士
「弁護士の業界って徒弟制度・職人気質みたいな。弁護士として一人前になるスキルを身につけていくために、『ボス弁』の言うことを聞いて、一生懸命学んでいく」

山本キャスター
「ボスの弁護士ということですか。『ボス弁』という言葉は当たり前?」

参加した弁護士
「普通の業界用語です。『兄弁』『姉弁』。女性の先輩の弁護士は『姉弁』」

山本キャスター
「縦社会なんだなと、聞いていて思いました」