2025年5月、経団連の新たな会長に日本生命の前会長・筒井義信さん(71)が就任した。非製造業出身の経団連会長は30数年ぶり。日本経済をどのように変えようとしているのか。

実質賃金上昇への見通しは?

まずは、与党が過半数を割り込んだ【参院選の受け止めと政治への期待】について―

経団連・筒井義信会長(71):
「非常に厳しい民意の表れであると受け止めている。今後政治が不安定化していかないように、重要政策が山積しているので一つ一つ迅速・着実に実行していくことが求められる。政策を前進させるために、政治の安定的な体制の確立を期待したい」

――参院選では物価高を何とかしてくれと【賃金が追いついていない】ことに不満が爆発したような格好になった。

「名目賃金の上昇率が3年5か月連続で伸びてきている。賃金引き上げのモメンタム(機運)は着実に定着をしてきていると我々は受け止めているが、実質賃金がなかなかマイナスから抜け出せない。賃上げをしても消費に結びついていかない。物価上昇率は今4%を超えている。これはコメや食品の割合が大きいわけだが、政府日銀が共同声明で出している安定的に2%程度という物価上昇率に落ち着いていくことができれば実質賃金が安定的にプラス圏に浮上していく見通しを持っている」

好循環の起点は「賃上げ」

では、実現しない【賃金と物価の好循環】をどう進めるつもりなのか。

――好循環を信じてこの3年みんな頑張ってきたが、いつまで経っても実現しないところに不満が高まっている。

経団連・筒井会長:

「好循環は一体どこが起点なんだろうと。どこから回し始めるのかを意識する場合、我々は“賃上げが起点”だと。それが価格転嫁されて経済が拡大基調に入っていく循環を回していく、まさにそれが賃上げだという意識でこれからも取り組んでいきたい」

――2026年春闘も2025年並みの賃上げを実現しなければならないと考えるか?

賃上げ・人件費はコストではなく“人への投資”。人への投資がさらに生産性向上を生むループも作っていかなければいけない。今度の賃上げで価格転嫁がより進むことを前提にすれば、2%の物価上昇率に1%程度の実質賃金上昇率を確保すべく経済界としては取り組んでいきたい。従業員数の7割が中小企業に雇用されている。中小企業の賃上げの原資をどのように確保していくか、社会全体で価格転嫁の風土を浸透させていく」