収益化の先にあるブランド価値の向上

メディア運営において、有料会員やPV数の獲得は至上命題とされがちです。しかし、収益化だけを追求するあまり、「このコンテンツは長期的に自社のブランド価値に貢献するのか?」という視点が疎かになるケースも少なくありません。

その点、Flowのメディアは、主軸である不動産事業の価値を高めるために存在する、という明確な位置づけがあります。Webメディアは単体で黒字化していますが、それはあくまで手段であり、最終目的は会員数を数十万人に増やすことではなく、Flowというレジデンスのブランド価値を向上させることなのです。

WeWorkは、その高い企業価値を最後まで正当化できませんでした。しかし今回のFlowでは、現実的な家賃設定や、メディア単体での黒字化など、ニューマン氏がかつての失敗を踏まえた「バージョン2.0」とも言える堅実な手を打っていることがうかがえます。

WeWorkのリベンジとなるこの挑戦がどこまで成長するのか。近い将来、日本のメディアでも「Flow」の名を耳にする機会が増えるかもしれません。

<野村高文>
音声プロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。