コワーキングスペースの概念を塗り替え、一世を風靡した「WeWork」。その創業者であるアダム・ニューマン氏は、巨額の資金調達とカリスマ性で時代の寵児となりましたが、数々のスキャンダルと経営悪化の末、2023年に会社は経営破綻に至りました。

しかし、そのニューマン氏が水面下で新たな挑戦を始め、すでに成功の兆しを見せていることはご存知でしょうか。彼が次に仕掛けるのは、住居(レジデンス)領域のビジネス「Flow」。WeWorkの挫折から何を学び、どのような戦略でリベンジを果たそうとしているのか。そのユニークなビジネスモデル、特に不動産の価値を最大化する「メディア戦略」に野村高文が迫ります。

<東京ビジネスハブ>
TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターの野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。今回は2025年6月8日の配信「WeWork創業者。密かに始めた次のチャレンジに成功の兆し!」を抜粋してお届けします。

一世を風靡したWeWorkとその挫折

まずはWeWorkについて、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。 WeWorkは、単なるコワーキングスペースではなく、「オフィスのコミュニティ」をコンセプトに、洗練された空間と入居者同士の交流を促進するサービスを提供しました。都市部のおしゃれなオフィスで働ける高揚感に加え、各拠点に常駐するコミュニティマネージャーがフリーランスやスタートアップ企業をつなぎ、ビジネス機会を創出する点が大きな魅力でした。

2010年代、WeWorkは大きな注目を集め、中でもソフトバンクグループの孫正義氏がニューマン氏の人柄に惚れ込み、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどを通じて投じた額は、日本円にして2兆円近くにも上りました。

「WeWorkのような企業が世界を変える」ともてはやされる一方で、創業者アダム・ニューマン氏の個性は、薬物やアルコール、パワーハラスメントといったスキャンダルにもつながり、彼は上場を目前にした2019年に経営の座を追われます。

その後、世界を襲ったコロナ禍は「リアルなオフィスは本当に必要か?」という問いを突きつけ、オフィス事業に強烈な逆風となりました。期待先行で膨らんだ時価総額とは裏腹に経営は悪化し、WeWorkは2023年11月に経営破綻しました。彗星のごとく現れ、一時代を築いたものの、成功には至らなかった物語です。なお、日本のWeWorkはソフトバンクの100%子会社が事業を承継し、現在も運営を継続しています。