「擁護するためのプロジェクトではない」 一発アウトの社会への違和感

会場には作家が2人座っていた。

京都から来た木村全彦(まさひこ)さんは色鉛筆を使って紙を埋め尽くすように描く。モチーフは動物だったり建物だったりバスだったり様々だ。作品をよく見ると無数の「E」のような形の集合体であることがわかる。この「Eのようなもの」を木村さんは「キュニキュニ」と呼ぶ。木村さんがもともと小山田さんについて知っていたかどうかはわからなかったが、一緒に会場に来ていたお父さんによれば、仲の良い弟さんは知っていたそうだ。ちなみにお父さんは「今回言われて初めて知った」。過去の騒動については「あまり気にならなかった」という。

木村さんと一緒に「Glow Within」のMVを見た。自分の作品が登場すると「出て来た!キュニキュニー!」と教えてくれた。曲の転換点では、作品が完成した際に彼が発したフレーズが差し込まれる。これが効いている。

もう一人は三重県から来た早川拓馬さん。大好きな電車がぎっしり詰まった色彩溢れる作風が圧巻だ。「Glow Within」にフィーチャーされている作品は、電車で形作られた人物が3人、こちらを見ている。そのうち一人はおそらく、彼のもう一つのオブセッションである女性アイドルだろう。この作品がくねくねと動き出す瞬間はMVのクライマックスの一つだ。

自分の作品をあしらったTシャツを着用した早川さんに話しかけると、嬉しそうにアイドル雑誌を見せてくれた。隣にいたお母さんは小山田さんについて「誰でも掘り返せば色々なことが出てくるもんじゃないですか。私も含めて、ねえ」と柔らかい笑顔を見せた。

発表イベントで松田さんは「これは小山田圭吾を擁護するためのプロジェクトではないんです」と繰り返した。炎上リスクもあるだろう。それでも「一発アウトな社会」への違和感、そして「人間は変われる」というメッセージも込めた、と話していた。ローンチの日も、東京オリンピックの開会式と同じ7月23日を選んだ。