小山田さんと障害のある13人の作家たち
ほどなくして小山田さん側から返事があり、打ち合わせが始まったという。小山田さんは手紙を受け取った時のことを、寄せたコメントの中でこう書いている。
「手紙の言葉に触れ、ずっと気にかかっていたことが頭に浮かびました。 過去に知的障害のある方々に対して、配慮を欠いた発言をしてしまい、批判を受けたことがあります。それ以降、自分なりにこの問題との関わり方を考えてきました。」
ヘラルボニーの展覧会に足を運んだ時のことを小山田さんはコメントで「内面がそのまま現れたような線や形にひかれました。描こうとして描いたというより、内側からこぼれ出てしまったように感じられました」と回想している。松田さんらとともに作家たちがいる施設を訪れ、彼らと時間を過ごしたり、施設のアートディレクターらと対話したりしながらプロジェクトを形作っていったようだ。

出来上がった作品「Glow Within」では、障害のある13人の作家の制作風景と「音」や「声」を記録した4時間ぶんの映像素材がカットアップされ、楽曲に詰め込まれている。音の断片と映像を編集して作っていく手法は小山田さんにとっては自家薬籠中のものだ。Corneliusそのもののサウンドに、作家たちのルーティン音や声がそれぞれの存在感を持って刻まれ律動を形成する。作家たちの、それ自体にリズムを感じる作品も散りばめられていて、明るく騒がしい5分弱だ。『Glow Within -Corneliusと13人の作家の声-』(~8月11日)と題された今回の銀座での展覧会では、作品がモニターで流れる中、それぞれの作家が使っているペンなど創作道具や椅子が展示されていて、彼らの呼吸を感じられるようになっている。