ロシアによるウクライナ侵攻から1か月あまり、両国の間では「地上戦」に加え激しい「情報戦」が展開されている。また軍の派遣は行わないアメリカなども情報面ではウクライナへの支援を続けている。

しかし、この戦争に関わっているのは軍だけではない。私たち一般市民も無意識のうちに、この戦争に関わりを持っていると指摘されている。SNS時代、私達が何気なく拡散する情報も戦況に少なからぬ影響を与えているからだ。
いま世界では、陸・海・空・宇宙・サイバーに次ぐ、第6の戦場として「認知空間」をめぐる争いが激化している。情報操作などを通じ人の脳を制する「制脳権」をいかに握るかが勝敗のカギを握る時代。新たな局面を迎える中、日本もその対応に動き出した。


■防衛省「グローバル戦略情報官」を新設

4月1日、閣議後の会見に臨んだ岸信夫防衛大臣は次のように話した。
「近年、国際社会においては、フェイクニュースの流布を含む、様々な戦略工作等が行われるなど、伝統的な安全保障領域にとどまらない動きが指摘されています」
こう話すと、防衛省に「グローバル戦略情報官」のポストを新設したと発表した。

「グローバル戦略情報官」は諸外国の報道やツイッターなどのSNSを使った発信の真偽や意図を分析し、フェイクニュースによる世論誘導を防ぐ役割を担うポストだ。岸防衛大臣は「国際情勢が複雑化しつつある情勢状況において、政治、経済、軍事、技術等、多様な側面を横断的に情報収集・分析する必要がある」と、その意義を強調した。

これまでも情報戦はプロパガンダなどとして行われてきたが、SNS時代の今、情報は国家のみならず市民を通じて、よりリアルタイムに、そして広範に渡るようになった。
紛争国においては、いかにSNSを通じ都合の良い情報を植え付けられるかが、戦いを有利に展開する上で重要なポイントとなっている。
このため、海を押さえる制海権、空を押さえる制空権と並び、人の脳を押さえる「制脳権」をめぐる争いが激化している。これはウクライナ侵攻でも見られる現象だ。