JX通信社・米重代表と考える、今回の参院選
井上貴博キャスター:
今回の参議院選挙では、既成政党への明確なノーが突きつけられたと思います。これまでは野党第一党に流れがちだったものが、今回の参議院選挙では分散しました。
一強多弱時代から多党時代に本格的に変わっていくのかなと思いますが、どんなことを感じていますか?

田中ウルヴェ京 スポーツ心理学者(博士):
今回の参議院選挙の結果は、民意の反映ということですよね。その意味では、価値観の多様性が本当に表れてきたのだと思います。
“解決できる能力”と、“選挙で当選できる能力”は違うと思いますが、どうお考えですか?

JX通信社 米重克洋 代表取締役:
選挙は、広い意味でいうと“マーケティング”的な側面もかなりあります。そのため“有権者に魅力的な政策を届ける”ことや、あるいはそれをうまく弁舌も含めて“発信をしていく”ことと、実際にその政策を“実現する力がある”かどうかは全く別の話です。
ただ、多くの有権者の皆さんは、そういったことも見極めようとして票を投じられていると思いますので、今回の選挙結果は1つの民意の表れとして、受けとめる必要があると思います。

井上キャスター:
今、次の選挙の期間でやりたいこととしてスタッフと話しているのが、“答え合わせをしないか”ということです。
「前回の選挙でどういった公約をして、それが本当にできたのか」「前回の選挙の公約は、何%できて何%できていないのか」そして「今回の公約は何なのか」。
我々の報道も毎回“点”でお伝えしてしまうので、“線”で見ていくべきだと思います。

JX通信社 米重克洋 代表取締役:
そうですね。実際、公約に関しては、野党であろうと実現する方法はあります。
直近の例でいうと、国民民主党が“年収の壁を動かす”という公約をしました。それは「年収の壁を少し動かすことができた」ことを彼らは成果として言っています。あるいは、「特定扶養控除を150万円に引き上げる」ことを、与党に達成させた。そういう形で検証することはできます。
一方で、それ以外ではできていない部分もある。それを有権者はどのように評価するのかという、わかりやすい整理ができます。
今回の参議院選挙で伸びた他の政党に関しても、政党ごとにさまざまな公約を掲げており、その公約に魅力を感じて投票した有権者の方もたくさんいらっしゃいます。
事前報道の取り組みも広がってきていますので、次の選挙までに“どこまで公約を達成できたのか、できなかったのか”ということを検証し、それを有権者の皆さんが見たうえで投票に向かっていただけるといいなと思います。
田中ウルヴェ京 スポーツ心理学者(博士):
今後は検証の仕方を工夫したいです。“定量調査だけでなく定性調査もいれる”、あるいはもし実現できなかったとしても、“どうすることで実現できるのか”といった建設的な話し合いも入れることが大事だと思います。
出水麻衣キャスター:
これからはデータの力が非常にパワフルになってきますよね。
JX通信社 米重克洋 代表取締役:
若い世代は減税を望んでいる一方、働いて賃金を得るのが難しい高齢者は給付を望むといった、世論調査のデータで見ても、世代ごとの違いや利害というのは非常に明確に出ます。
新しい政党は、そういった比較をしっかりと見た上で、現役世代なら現役世代に向けて発信をするといったことが進んできていると思います。
一方で、比較的そういったことに対して鈍感である、有権者や世論と意思疎通していないと思われてしまうと、特に既成政党に対しては「投票対象にしにくいな」と思われる有権者の方もいるのではないかと、今回の選挙結果から感じます。