リコールの仕組みと民進党の狙い

リコールが成立するまでの流れは以下の通りです。

① 26日の投票で、対象議員の罷免に同意する票が、同意しない票を上回る。
② かつ、その同意票が有権者総数の4分の1以上となる。
③ 上記2つの条件を満たすと、その議員の罷免が成立する。

罷免が成立した場合、その議員の選挙区では年内にも補欠選挙が行われます。そうなれば、今度は政権与党の民進党の候補が当選する可能性も出てきます。民進党は現在の51議席に6議席を積み増せば立法院で過半数を確保できます。そして、民進党が過半数の議席を持てば、頼清徳総統にとって、これまで阻止されてきた予算案や法案を成立させることが容易になるわけです。

頼清徳総統は民進党のトップである主席を兼務しており、6月末に開かれた民進党の大会で、リコールへの支持を表明しました。その理由は「中国の脅威」です。頼総統は「数多くの予算案、法案が野党のボイコットによって阻止されてきた。それらの法案は、防衛や台湾の安全に直結している。リコール運動は国の存亡を憂う市民が自主的に起こしたものだ」と述べ、リコール運動の正当性を強調しました。

野党の反論と中国の「火遊び」発言

当然ながら、リコールの対象となった野党・国民党サイドは強く反発しています。台湾全土で運動を展開し、「26日には投票所へ行こう。『罷免に同意しない』という一票を投じよう」と呼びかけています。また、「頼総統は『中国大陸からの脅威』を訴えるが、与党・民進党の立法委員たちこそ、中国相手にビジネスで金儲けしているではないか」とも反論しています。台湾独自のアイデンティティを強調し、「我々は中国とは一体にならない」と主張する民進党の中にも、親族が中国と商売をする立法委員がいるからです。

台湾では現在、大規模な軍事演習が7月18日までの10日間行われています。年に一度実施される台湾最大の演習ですが、例年は5日間程度で、今年はその2倍の期間、参加人数も過去最多となっています。台湾当局の力の入れ具合が伺えますが、「中国の脅威」を強調する中で、リコール投票とこの演習のタイミングが見事に重なっているのも興味深い点です。