貿易赤字「米国にも世界にもプラスの面が大きい」

その“トランプ関税”の背景にあるのが「アメリカの貿易赤字」だが、2000年頃から増加が加速している。

▼2000年⇒3696億ドル
▼2006年⇒7500億ドル突破
その後リーマンショックで景気が悪くなり赤字額は減ったものの、再び増加し
▼2024年⇒9035億ドル

しかしこの貿易赤字の増加は、「アメリカの景気が独り勝ちで、輸入増加につながった結果」と話すのは、国際経済学が専門の『東京大学』名誉教授・伊藤元重さんだ。

『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「アメリカは貿易赤字だが、逆にアメリカに対して海外からものすごい投資が来ている。全体でお金が回っているわけだから、アメリカの貿易赤字はアメリカにとっても世界にとっても、実はプラスの面が大きい」

「自由貿易体制」が変わる可能性

それでも、高関税政策をとるトランプ政権。

ある国が輸入するすべての品目にかかる関税率を平均した【単純平均関税率】で見ると、アメリカは2010年以降5%以下の水準で推移。
2025年1月の第2次トランプ政権発足時には「2.48%」だったが、2025年の予測では「18%」となっている。(※2010~2024年実績 Tax Foundation / 2025年予測 イェール大学(7月10日時点))

そして、【関税収入】は6月時点で266億ドル(約4兆円)で、前年同月から約4倍になっている。

ーーこれまで自由貿易の先頭に立っていたのがアメリカ。関税率を下げることが経済成長を促し、人々を豊かにすると。それは間違いだったのか

『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「自由貿易も、戦後何十年とやってきた時期と、2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して以降でかなり違ってきている。急速に中国からの輸入が増え、オハイオやペンシルバニアの雇用などに非常に大きな影響を及ぼした。なので貿易を増やすことによる“利益”よりも“痛み”の方が大きいと感じる人が増えているのだろう。本当は利益の方が大きいが、薄く広く広がる。痛みは特定の地域・人に非常に集中する傾向があるので、その対応として関税が一番わかりやすいということ」

ーー逆に言うとアメリカが高関税を当たり前にするなら、我々もという国が増える可能性もある

伊藤さん:
「あるいは、“関税を下げようという力”も各国から出にくくなる。自由貿易は、自由化をどんどん進めていくことが重要だが、原動力、リーダーがいなくなるわけだから、厳しい状況」

(BS-TBS『Bizスクエア』2025年7月12日放送より)