“トランプ関税”で株高なぜ?

一方で、各国への新たな関税率発表後、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は上下を繰り返しながら高値圏を維持。ナスダック総合指数は、9・10日と2日連続で最高値を更新している。

その理由を「トランプ政権のプラス面への期待」と話すのは、ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド『ホリコ・キャピタル・マネジメント』の堀古英司さんだ。

堀古さん:
“トランプ政権は、株式にとってプラスとマイナス両面”ある。マイナス面は、関税や不法移民の追放などトランプ氏の“予期しないサプライズ発言”。一方プラスは、減税や規制緩和、それと恐らく秋から始まる利下げなど。実はマイナスはもうほぼ出尽くしていて、“残るはプラス面ばかり”という期待が株式市場に表れているのだと思う」

ーー市場関係者から見ると、トランプ政権の関税政策は是としているということか

掘古さん:
「関税はマイナス面ばかり報道されてるように見えるが、アメリカにとってはプラスとマイナスがあり、“少しマイナスかな”という程度。今後注意すべきは<ドル安>や<相手国の報復>だが、トランプ氏の書簡には『報復したらさらに25%上げる』とあるので、報復の可能性は低い」

関税で米国企業は「楽して儲けられる」

関税が上がると物価も上がる。それでも多くの国民が支持しているのだろうか。

『ホリコ・キャピタル・マネジメント』堀古英司さん:
「例えば教育や雇用の機会において積極的に格差を是正する<アファーマティブアクション>という考え方がアメリカでは根付いている。今回も製造業を中心にした不得意な産業分野を放っておくと強いものが勝ち弱いものが消え、最後、インフラも資源もアメリカにはなくなってしまう。なのでアファーマティブアクション、すなわち関税で国内産業をある程度保護する。そういう考えが国民に広くいき渡ってるのではないか」

ーー関税でのインフレ加速や景気悪化の懸念は薄れてきているということか

掘古さん:
“関税導入で物価が上がるのは1回だけ”というのが注意点。関税が毎年上がるならインフレに繋がるが、1回だけというのが決定的な違い。また消費者は割を食うが、それ以上に国外の競争相手がいなくなり“国内の産業が楽して儲けられるようになる”。銅の追加関税50%(8月1日から発動)の発表でも、銅企業の株がむちゃくちゃ上がっている。マイナス面もあるが、関税収入など実はプラスの面は結構ある」

さらに、物価上昇への懸念が薄れる背景には「AI(人工知能)」の存在があるという。

掘古さん:
「(AI開発に欠かせない半導体を開発する)エヌビディアの株価が上がってることからもわかる通り、今は生産性の上昇にはAI。“ある程度の物価の上昇はAIの生産性上昇で吸収できる”と」